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『パラノイドパーク』 [洋画(ハ行)]

「パラノイドパーク」(2007)★★★☆65点
原題: PARANOID PARK
監督・脚本・編集: ガス・ヴァン・サント
製作: ニール・コップ、デヴィッド・クレス
原作: ブレイク・ネルソン
撮影: クリストファー・ドイル、レイン・キャシー・リー
出演:
 ゲイブ・ネヴァンス(アレックス)
 ダン・リウ(リチャード・ルー刑事)
 テイラー・モンセン(ジェニファー)
 ジェイク・ミラー(ジャレッド)
 ローレン・マッキニー(メイシー)
 スコット・グリーン(スクラッチ)
 ジョン・マイケル・バローズ(警備員)
 グレイス・カーター(アレックスの母)
 ジェイ・ウィリアムソン(アレックスの父)
 クリストファー・ドイル(トミー、アレックスの叔父)
 ディロン・ハインズ(ヘンリー)
 エマ・ネヴァンス(ペイズリー)
 ブラッド・ピーターソン(ジョルト)
 ウィンフィールド・ジャクソン(クリスチャン)
 ジョー・シュワイツァー(ポール)
製作・ジャンル:フランス=アメリカ/ドラマ・青春・クライム/85分

パラノイドパーク [DVD]








ガス・ヴァン・サント監督作品と言えば、
「ドラッグストア・カウボーイ」「小説家を見つけたら」など、
揺れ動く若者の心理を
繊細だが、感傷に頼らず表現する印象がある。

本作では、主人公アレックスが
貨物列車に飛び乗る危険な遊びに興じる中、
過失致死を犯してしまう経緯を、時系列を前後しながら描く。

下からの、あるいは低めのアングルは
アレックスの目線を意識したカメラワーク。
そして、緊迫感を表わす長い沈黙の間合い。
若者を等身大で描く上で非常に効果的である。

列車の車輪で、胴体を真っ二つに切り裂かれた警備員。
上半身だけで這いながらアレックスに近づくシーンは
グロさはあまり感じさせないが、ショッキングな映像だ。

"セックスまで進むと、女の子との関係は面倒になる"
アレックスは、ヤリたい盛りの高校生にしてはきわめて珍しい。
そこそこ綺麗な彼女と別れ
お世辞にも可愛いとは言えない女友だちと時間を共にする。
背伸びしているでもない、斜に構えているでもない、
その冷静さは、私には
澄み切った湖面のように純粋なものに映り、羨ましく思う。
それとも、これこそが象徴的な現代の若者なのか。

"手紙にしたためれば、気持ちが楽になる" という
メイシーのアドバイスに従って、
筆を走らせ、そして火にくべるアレックス。
それで、事件に決着をつけられるのか、
忘却の彼方に葬り去ってよいものなのか。
多感な時期だけに、大人になっての出来事よりずっと
心の傷になるのではないだろうか。
自首して法の裁きを受けるほうが、その後の人生は楽に思える。
私ならどちらを選ぶかも分からないし
どちらが正解とも断言できない。
そういう曖昧さと混沌を多分に孕むのが若者の証だ。

監督が、脚本から編集まで手がけているように
プロット・構成・映像、
どれを取っても綿密に練り上げられ
決して激情的に描かない姿勢は高く評価できる。
ただ、自分の青春期を振り返り頭では理解するのだが
あまり私の胸に響いてこないのは、
私が愚鈍な大人に成り下がってしまったせいだろうか。

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『ブラインド・ミッション』 [洋画(ハ行)]

「ブラインド・ミッション」(未)(2001)★★★☆70点
※(未):日本未公開作品
原題: AANKHEN
監督・脚本: ヴィプル・アムルトラル・シャー
脚本: アーティーシュ・カパーディア
原作: ショーバナ・デサイ
撮影: アショーク・メーヘーター
美術: ジャヤント・デシュムーク
音楽: アーデーシュ・シュリヴァースタヴァ、ジャッティン・ラリット
衣裳: ロシャン・モーミン
出演:
 アミターブ・バッチャン(ヴィジェイ・ラジプート、元ヴィラスラオ・ジェファソン銀行支配人)
 スシュミター・セーン(ネーハ・スリヴァスタヴ、盲学校教師)
 アクシャイ・クマール(ヴィシュワース・プラジャパティ)
 アルジュン・ラムパール(アルジュン・ヴェルマ)
 パレッシュ・ラワル(イリアス)
 アディティヤ・パンチョリー(副本部長・刑事)
 アルーン・バリ(ゴエンカ、銀行頭取)
 アジート・ヴァッチャーニー(バンダーリ、銀行役員)
 パレーシュ・ガナトラ(シャイレシュ)
 マルヴィカ・シン(ディルナズ、女性行員)
 ビパーシャ・バース(ライナ)
 カシュミラ・シャー
製作・ジャンル: インド/サスペンス・犯罪/165分

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支配人の座を追われた男が
盲人を使った銀行強盗によって復讐を図るクライム・サスペンス。
オリジナルは165分のようだが
私が視聴したのは、125分ほどに編集されたバージョン。

インド物の鑑賞は
「スラムドッグ$ミリオネア」(インドを舞台にした英国映画)以来。
インド映画の特徴であるダンス。
本作も主役ラジプートを演じるアミターブ・バッチャンを
センターに据えた群舞で映画が始まる。

インド事情にまったく疎い私。
彼の地では、アミターブ・バッチャンはスーパースターらしい。
冒頭では、彼のキャラクター紹介となる専制的なエピソード。
一転、彼が "静" を貫き進行する中盤の訓練・強盗のシーンでも、
その典型的なアーリア人種の風貌と相俟って、
場に緊張感を与え、ドラマをギユッと引き締めている。

また、ネーハに扮するスシュミター・セーンは
プロポーション抜群の美人。
インド初のミス・ユニバースというのも納得の美しさ。
今、私のPCの壁紙は彼女の顔のアップである。
女優としても大成功を収めており、ハリウッドにも進出している模様。
俄然、インド映画に興味が湧いてきた。

支配人時代のラジプートは、
残酷なまでに、妥協を許さない冷血漢。
お得意様の金を1ルピーくすねた行員を
受付のガラス窓に叩きつけ、殴り倒す。

ところで
額の大小を問わず、
ネコババすれば懲戒免職になるのが定石と思うのだが
この行員、その後も銀行で働いている。
脚本が雑なのか、これがインドの常識なのか。

銀行から追放されたラジプートは
自ら設計したセキュリティ万全の銀行本店を襲撃する、
という至難の復讐劇を企てる。
ふと通りがかった盲学校での出来事をきっかけに
盲人を銀行強盗に使うことを考えつく。
成功率には疑問符がつく計画だが、発想の意外性には感服する。

ヴィシュワースの紹介のときだけ
PVのような映像とともに歌いまくる。
あまりに唐突で、こんなところで、こんなポップな音楽を流すか?
と突っ込みたくなる場面もあり、まだまだインド流に慣れない。
だが、"これぞインド映画の売り" と楽しむほうが得策のようだ。

黒幕として、存在を伏せて訓練を見守るラジプート。
第六感の働くヴィシュワースだけは、
初めから黒幕が常に同席していることを察し
ことある毎に、ボスの正体を暴いてやろうと試みる。
ヴィシュワースのふてぶてしさが招く緊迫感がたまらなくいい。

脅迫や騙しで加担を余儀なくされた盲人たちとネーハ。
訓練を通じ、彼らの間には友情が芽生え、絆を深めていく。
ドラマを生むには対立が不可欠。
彼らとラジプート。
目的を同じくしながらも動機を異にするところから
対立構造もしっかり構築されている。
まさしく、これが軸になって作品を面白くしているのだ。

サングラスをしているシーンも多々あるため
背格好の似ているアルジュンとヴィシュワースの区別がつきにくい。
よく見れば髪型も顔立ちも結構違っているのだが
ちょっと引きの画になると…少なくとも、私には分かりづらかった。

宝石の隠し場所を追及する中、
ラジプートはイリアスを殺してしまう。
約束になかった殺害を許しがたくなったネーハ。
自分がいなければラジプートを追い詰められると悟った彼女は
弟より残された仲間の2人を救うため、彼女は自殺の道を選ぶ。
ヒロイン的存在だと思っていたネーハが死ぬのには
そうあってほしくないという願望もあって、ちょっと衝撃だった。

ネーハの望みどおり
ラジプートに容疑がかかる流れとなるのだが、
ネーハが生前、用意周到に
訓練用の銀行セットを処分していた事実には、見事一本取られた。

ラストのどんでん返しは
少々ご都合主義の感を否めないが、
終演後の顛末を観客の想像に任せる終り方は味わい深い。

痛快な復讐劇だと思っていただけに
予想のつかない展開はスリル満点で
最後まで観る者を飽きさせない。
すでに、ハリウッドがリメイク権を手に入れているそうである。
日本未公開の本作、DVDも発売されていないとは残念だ。
  
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『ペーパー・ムーン』 [洋画(ハ行)]

「ペーパー・ムーン」(1973)★★★★☆80点
原題: PAPER MOON
監督・製作: ピーター・ボグダノヴィッチ
原作: ジョー・デヴィッド・ブラウン
脚本: アルヴィン・サージェント
撮影: ラズロ・コヴァックス
プロダクションデザイン: ポリー・プラット
出演:
 ライアン・オニール(モーゼ・プレイ)
 テイタム・オニール(アディ・ロギンス)
 マデリーン・カーン(トリクシー・ディライト)
 ジョン・ヒラーマン(ハーディン保安官/ジェス・ハーディン)
 P・J・ジョンソン(イモジン)
 バートン・ギリアム(ホテルのフロント係)
 ローズマリー・ランブリー(ビリー伯母さん)
受賞:
 アカデミー賞
  ■助演女優賞 テイタム・オニール、マデリーン・カーン
 ゴールデン・グローブ
  ■有望若手女優賞 テイタム・オニール
製作・ジャンル: 米国/ドラマ/103分

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聖書の押し売りで稼ぐペテン師・モーゼが
母を亡くしたアディを親戚の家に送り届けるロード・ムービー。

本作は、ライアンの実の娘テイタムのデビュー作にして
実の親子が、親子もどきを演じた貴重な作品。

頭の回転の速いませガキを、テイタムが見事に演じている。
オスカー受賞もうなづける天才ぶり。
親子俳優のやりとりは息もぴったりだ。
大人顔負けの演技を披露する彼女も
がに股で階段を駆け下りる姿などを見ると
やはり子供だな、と安心する。

詐欺を働きながらの道中、大の大人であるモーゼは
わずか9歳の女の子に、
お釈迦様の手の上で弄ばれるかのように、手玉に取られる。
ペテン師のお株を奪われることもあれば
知らぬ間に、アディのシナリオ通りに踊らされもする。

しかし、それも
すべては、父親かもしれないモーゼに対する愛情のなせる業。
当初、相手にもしていなかったモーゼが
旅を続けるうちに、アディに愛情を覚えていく様は微笑ましい。

道中出会うのは、いいことばかりではない。
予想のつかない出来事が次々に起こるストーリー展開も
観る者を飽きさせない。

伯母の家に送り届けられたアディが
モーゼを追いかけてくるであろうことは想像がつくが
"200ドルをまだ返してもらっていない" ことを理由に
連れて行け、とアディが要求するラストには
思わず泣き笑いしてしまう。

流れるエンドロールの向こう、
坂の下に小さくなっていくトラックを見ながら
きっと2人が幸せな親子になることを確信するのである。
DVDのジャケット写真はもう夢の代物ではなく、
アディがペーパームーンに一人で腰かけることはもうない。
素敵な親子愛に心温まる秀作。

シャーリー・テンプルの再来と騒がれたテイタム。
「がんばれ!ベアーズ」シリーズの大ヒットの後、
全くいい役に恵まれず
稀代の天才子役は順調な芸歴を積み上げられなかった。
ついには、麻薬にも手を出してしまったようで
残念な思いでいっぱいになるとともに、
この世界、大成することの難しさをつくづく感じる。

昔、容貌や印象が似ていることから
R・オニールとポール・ニューマンを、
T・オニールとジョディ・フォスターを
よく取り違えたのを思い出した。
 
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『ピエロの赤い鼻』 [洋画(ハ行)]

「ピエロの赤い鼻」(2003)★★★★85点
原題: EFFROYABLES JARDINS
監督: ジャン・ベッケル
製作: ルイ・ベッケル
原作: ミシェル・カン『ピエロの赤い鼻』
脚本: ジャン・ベッケル、ジャン・コスモ、ギョーム・ローラン
撮影: ジャン=マリー・ドルージュ
音楽: ズビグニエフ・プレイスネル
出演: 
 ジャック・ヴィルレ(ジャック・プゼ、教師)
 アンドレ・デュソリエ(アンドレ・デサンジ、帽子工)
 ティエリー・レルミット(ティエリー・プレザンス、保険代理人)
 ブノワ・マジメル(エミール・バイユール)
 ヴィクトール・ガリビエ(フェリクス・ジャルビエ)
 シュザンヌ・フロン(マリー・ジャルビエ、フェリクスの妻)
 イザベル・カンディエ(ルイーズ)
 ニナ=パロマ・ポーリー(フランソワーズ、ジャックの娘)
 ダミアン・ジュイユロ(リュシアン、ジャックの息子)
 ベルニー・コラン(ベルント "ゾゾ"、ドイツ兵)
製作・ジャンル: フランス/ドラマ/95分

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サーカス同様
ピエロというだけで、その裏にペーソスを感じてしまうが
この物語もピエロという存在をキーに哀愁の漂う映画となっている。

ストーリーは、二次大戦後のフランスを現在に置き
子どもへの昔語りとして、ドイツ占領下のフランスに時間を遡る。

ピエロを演じるために縁日へ出かける。
仕度をし、車で友人を拾い、会場に着くまでの短い間に
ジャック、アンドレ、ティエリーの人柄・人間関係が分かってしまう。
脚本以上に、俳優陣の人間的魅力と演技力の賜物である。

また、後になって悟ることだが
ジャックの妻が観客に正体を知れないよう、
地味なファッションでその慌ただしいシーンに紛れていることは
観る者にとって大きな幸いである。
(目ざとく気づいてしまった人は残念。人間、時に鈍感こそ幸いということがある)

主役のジャックとアンドレを演じる2人の俳優。
役名と同名だというのも何か運命じみたものを感じる。
また、ジャック・ヴィルレは既に故人だそうだ。
こんな素敵な俳優を50代半ばで奪ってしまうとは
天も罪なことをするものである。

小道具で一つ私の目を引いたのは
冒頭、ジャック一家が乗り込む黄色い小型自動車。

Dyna.jpg

その名をパナール・ディナ(Panhard Dyna)58年型。
丸っこい流線型のフォルムがしなやかさと美しさを兼ね備える。
さらには
中央のピラーを軸に前後のドアが外側に開くイカしたデザイン。
普段、車と無縁な私でも欲しくなってしまう。

日常のつまらぬ屈辱を恨みに
人の命を奪うかもしれない人質指名を
敵に与して行ってしまう人間がいたという設定も
悲しいかな、現実にもあったにちがいないと思うと恐ろしい。

"生きているかぎり希望がある" と伝える独兵ベルントが
上官に反抗してあっさり命を落とすのは辛い。
銃殺時にベルントの鼻から外れ、
ジャックたちが捕らえられている穴に転がり落ちる赤い付け鼻。
とても重要なアイテムの一つだ。

生前、見張りとしてジャックたちと交流を図るベルントが
小さなアコーディオンを手に口ずさむ主題歌。
シャルル・トレネの "Y'a de la joie(喜びあり)" は
フランス人なら誰でも知っている名曲なのだろう。
赤い鼻とともに、胸をジワッと温めるラストを飾ることになる。

親友のために、
恋愛の駆け引きから身を引き独身を貫くアンドレ。
その友だち想いはいじましくさえ思える。
フランス物だけに、「シラノ・ド・ベルジュラック」を思い出したりした。

優しい人ばかりの間で
ちょっとした冒険から起きてしまった悲劇。
それを乗り越え、生きる喜びを取り戻していく源も
やはりそのあふれんばかりの優しさだったのだ。

オーラスで涙がこみ上げてきた。
息子リュシアンが
感涙を湛えながら父の演技に泣き笑いする姿を目にしては
その涙をこらえ切ることはできない。

決して派手な作品ではないが
秀作と言って差し支えない作品である。


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『ハリケーン』 [洋画(ハ行)]

「ハリケーン」(1979)★☆☆☆25点
原題: HURRICANE
監督: ヤン・トロエル
製作: ディノ・デ・ラウレンティス
原作: チャールズ・ノードホフ
脚本: ロレンツォ・センプル・Jr
撮影: スヴェン・ニクヴィスト
音楽: ニーノ・ロータ
出演:
 ミア・ファロー(シャーロット・ブルックナー、総督の娘)
 ジェイソン・ロバーズ(ブルックナー大佐、米国海軍総督)
 デイトン・ケイン(マタンギ、アラバ島の族長の息子)
 アリロー・テクラレール(モアナ、マタンギの婚約者)
 マックス・フォン・シドー(ダニエルソン、医師)
 トレヴァー・ハワード(マローン、神父)
 ティモシー・ボトムズ(米国海軍大尉/ジャック・サンフォード)
 マヌ・トゥプー(サモロ)
製作・ジャンル: 米国/パニック/120分

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1920年代の東サモアを舞台に
ハリケーンを題材にしたパニック映画。

若きミア・ファローが
サモア人の若者と恋に落ちる、純粋で可憐な娘を演じている。

その父親役のJ・ロバーズは、娘の恋人を目の敵にする。
その独善的で理不尽な言動から、過ぎるほどに分かりやすい悪役。

ハリケーンに襲われるシーンが単調で長い。
確かに、ハリケーンにしろ台風にしろ
通過するのに数時間は激しい影響を受けるし
仕方がないと言えばそれまでだが、
似たような映像ばかりで退屈だ。
ハリケーンがパニック物に適さないのかもしれない。

ハリケーンの去った後は
定石どおり、
悪役は死んで、主役の恋人たちは生き残るが
かと言って、その悪役はヒロインの肉親であり、
気持ちよくハッピーエンドとは言えない。

ハリケーンがやってくる以前に
シャーロットとマタンギの恋によって
マタンギの婚約者も死んでしまうし、
シャーロットに思いを寄せる軍人も振られた上に
その父の強引な命令の巻き添えを食って
こちらも死んでしまう。

エンディングには、ニーノ・ロータの平和な曲が流れるが
彼の音楽を使うにはミスマッチな映画。

J・ロバーズを筆頭に、
マックス・フォン・シドー、T・ハワード、T・ボトムズ。
映画創成期を支えてきた重鎮が出演しても
コアとなるドラマが陳腐すぎては、無用の長物。

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『54 フィフティ★フォー』 [洋画(ハ行)]

「54 フィフティ★フォー」(1998)★★★☆65点
原題: 54
監督・脚本: マーク・クリストファー
製作: アイラ・デューチマン、リチャード・N・グラッドスタイン
撮影: アレクサンダー・グラジンスキー
プロダクションデザイン: ケヴィン・トンプソン
衣装: エレン・ラッター
音楽: マルコ・ベルトラミ
出演:
 ライアン・フィリップ(シェーン・オシー)
 サルマ・ハエック(アニタ・ランダッツォ、"54" のクローク係)
 ネーヴ・キャンベル(ジュリー・ブラック、TVスター)
 マイク・マイヤーズ(スティーヴ・ルベル、"54" のオーナー)
 ブレッキン・メイヤー(グレッグ・ランダッツォ、"54" のウェイター・アニタの夫)
 シェリー・ストリングフィールド(ヴィヴ、税理士)
 エレン・アルベルティーニ・ダウ(ドティ、"54" のダンサー)
 ダニエル・ラパイン(マーク・ベネケ、"54" のドアマン)
 セーラ・ウォード(ビリー・オースター、音楽業界の大物)
 ロバート・バウアー(ローランド・サッチョ、ジュリーの恋人)
 スキップ・サダス(ハーラン・オシー、シェーンの父)
 ヘザー・マタラッツォ(グレース・オシー、シェーンの上の妹)
 エミリア・ロビンソン(ケリー・オシー、シェーンの下の妹)
 ジェイソン・アンドリュース(アンソニー、集金係)
 ノーム・ジェンキンス(ロメオ、"54" のバーテン)
 コール・サダス(レット、"54" のバーテン)
 キャメロン・マシソン(アトランタ)
 ジェイ・ゴーデ(バック)
 パトリック・テーラー(ターザン)
 ロリ・バグリー(パティ、モデル)
 ローレン・ハットン(リズ・ヴァンゲルダー、実力者)
 ショーン・サリヴァン(アンディ・ウォーホール)
製作・ジャンル: 米国/ドラマ・青春/101分

54(フィフティ★フォー) [DVD]








1977~86年にかけてニューヨークに実在した
ディスコ "スタジオ54" を舞台にした青春ドラマ。

主人公は
ビール一杯2ドルのニュージャージーの安ディスコから
NYの最先端ディスコ "54" へ。

そこは「選ばれし者」だけが
その栄誉に浴すことができる特別な場所だった。

華やかな世界に憧れた青年が
その虚飾と欺瞞にまみれた世界で成長していく。

出演俳優陣のラジー賞のノミネートはあるし
頽廃を気取ったチープな作品だと思っていた。
主人公をめぐるドラマとしては盛り上がりに欠けるが
時代を感じながらノスタルジックに結構楽しめた。

閉鎖から3年後に46歳で亡くなったルベルは
興味深い人物の筆頭だが、
演じるM・マイヤーズは
もっとカリカチュアした演技でも良かったのかな、と感じる。

若者3人を中心とした恋愛ドラマは
グレッグの中途半端なキャラクターが
すべてを甘々で駄目なものにしている。
セクシーで魅力的なサルマ・ハエックも
このプロットでは活きることができず、
低質な脚本に巻き込まれた形。

テーマの一つになっている、当時の "54" を取り巻く風俗に関して。

映画にも登場するドアマンのマークのせいで、
実際のディスコのオープニング初日に入場できなかったセレブには
ウォーレン・ビーティ、ウディ・アレン、
ダイアン・キートン、フランク・シナトラなどの名があったそうだが
確かに、この面々はポップなイメージが薄いかな、とは感じる。

エンドロールの脇に映し出される写真の通り
このディスコに出入りした有名人は数知れず。
音楽・映画業界は勿論、その他
演劇界からは
ミハイル・バリシニコフ、マーサ・グラハム、ルドルフ・ヌレイエフ、
画壇からは、サルバドール・ダリ
文壇からは、トルーマン・カポーティ
政財界からは、ジャッキー・オナシス、JFK Jr.、グレース妃、トランプ夫妻、ヒルトン夫妻、
スポーツ界からは、ビヨン・ボルグ、モハメッド・アリ、ペレ
などなど、その幅の広さにも驚くばかりだ。
写真を見るだけでも、その活気に満ちた記憶を甦る。

先日久しぶりに観た「トッツィー」にも
A・ウォーホールは登場したが、
さすがにこちらのチープな作品には
本人を登場させる説得力も金もなかったようだ。

"disco(ディスコ)" という言葉自体が今は昔となってしまったが
club より熱いその響きがたまらない。

"Party's over."
バブルに限らず、夢に満ちていた世界、そして日本
栄華の儚さとそれを想うときの甘美な哀切に
いつまでも浸っていたいとセンチになるのは私だけだろうか。

若者から、"懐古主義の中年オヤジ" と呼ばれようとも
私たちはキラキラした素晴らしい時代を体験したことを幸せに思う。

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『ヒンデンブルグ』 [洋画(ハ行)]

「ヒンデンブルグ」(再)(1975)★★★☆70点
※(再):私が以前に観たことのある作品
原題: THE HINDENBURG
監督・製作: ロバート・ワイズ
原作: マイケル・M・ムーニー
脚本: ネルソン・ギディング
脚色: リチャード・A・レヴィンソン、ウィリアム・リンク
撮影: ロバート・サーティース、クリフォード・スタイン
音楽: デヴィッド・シャイア
美術: エドワード・C・カーファグノ
装置: フランク・R・マッケルヴィ
音響: レナード・ピーターソン、ドン・シャープレス、ジョン・L・マック、ピーター・バーコス
特殊効果: アルバート・J・ウィトロック、グレン・ロビンソン
衣裳: ドロシー・ジーキンス
出演:
 ジョージ・C・スコット(フランツ・リッター、空軍大佐・ヒンデンブルグ号保安主任)
 ウィリアム・アザートン(カール・ベルト、同号整備士)
 ロイ・シネス(マルティン・フォーゲル、同号専属カメラマン)
 アン・バンクロフト(ウルスラ、伯爵夫人)
 チャールズ・ダーニング(プルス、同号船長)
 リチャード・A・ダイサート(エルンスト・レーマン前船長)
 テッド・ゲーリング(クノール、ヒンデンブルグ号整備士)
 ピーター・キャノン(リュデッケ、同号整備士)
 ギグ・ヤング(エドワード・ダグラス、米国広告代理店重役)
 ロバート・クラリー(ジョー・スパ、軽業師)
 ピーター・ドーナット(リード・チャニング、歌手)
 ジョアンナ・ムーア(チャニング夫人)
 ルネ・オーベルジョノワ(ナピア少佐)
 バージェス・メレディス(エミリオ・パジェッタ)
 アラン・オッペンハイマー(アルバート・ブレスロー、ダイヤの運び人)
 キャサリン・ヘルモンド(ミルドレッド・ブレスロー、アルバートの妻)
 ジーン・ラムジー(ヴァレリー・ブレスロー、アルバートの娘)
 リサ・ペラ(フリーダ・ハルレ、ベルトの恋人)
 ジョイス・デイヴィス(エレノーレ・リッター、フランツの妻)
 コルビー・チェスター(エリオット・ハウエル3世)
 ハーバート・ネルソン(フーゴー・エッケナー博士、ツェッペリン飛行船会社経営者)
 グレッグ・マラヴェイ(H・モリソン、ラジオ局レポーター)
受賞:
 アカデミー賞
  ■特別業績賞(視覚効果) アルバート・J・ウィトロック、グレン・ロビンソン
  ■特別業績賞(音響効果) ピーター・バーコス
製作・ジャンル: 米国/パニック/115分

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大爆発を起こしたヒンデンブルグの真相の謎解きに
一つの解釈を与えた映画。

歴史物、特に謎解きが絡む作品は私の好み。

米国製作だけに、当然英語で展開されるので
ドイツ感が薄いのがちょっと不満。

爆弾犯の(この時点では犯人かどうか不明だが)ベルトを発見して
去り際に「本当は何をするつもりだ?」と問うリッター。
その時のショットは、階段下にいるベルトの目線。
下から煽るカメラワークが非常に印象的だ。

ベルトが誤って開けた穴の修繕。
作業が完了しないうちに、
高度維持のために全速で上昇せざるを得なくなる。
風との闘いとなる船外作業。
時間との競争。
船長の決断。
タイムリミットこそスリル満点のドラマを生むのだ。

明らかに合成であろうが
夕景の地平線に向かう飛行船のショットが美しい。

フォーゲルの登場とともに、爆発を迎えるのは
リッターの作業が単純に間に合わなかったのだろうが、
時計の針を合わせ損ねたようにも
リッターが復讐を果たそうとしたようにも思える。
時計の竜頭を回すリッターの苦悩に思いを馳せた。

爆発以降は
物語の始まる前の、ニュース映像同様に
画面はモノクロに戻る。
燃え上がる炎は
紅くないことで却って、事故の凄惨さがリアルに迫ってくる。

H・モリソンの涙に詰まった実際の中継音声は
聴いている者の胸を激しくゆさぶる。

脂の乗った40代のA・バンクロフトは
美しいだけでなく、貫禄・存在感たっぷり。

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『バンディダス』 [洋画(ハ行)]

「バンディダス」(未)(2006)★★★☆☆60点
※(未):日本未公開作品
原題: BANDIDAS
監督: ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドバーグ
製作・脚本: リュック・ベッソン
製作: アリエル・ゼトゥン
脚本: ロバート・マーク・ケイメン
撮影: ティエリー・アルボガスト
音楽: エリック・セラ
出演:
 ペネロペ・クルス(マリア・アルバレス)
 サルマ・ハエック(サラ・サンドバル)
 スティーヴ・ザーン(クエンティン)
 ドワイト・ヨーカム(タイラー・ジャクソン)
 デニス・アーント(アッシュ)
 サム・シェパード(ビル・バック)
 オードラ・ブレイザー(クラリッサ・アッシュ)
 イスマエル・イースト・カルロ(ドン・ディエゴ)
 ゲイリー・セルヴァンテス(ペドロ)
製作・ジャンル: 仏国=メキシコ=米国/西部劇・クライム・アクション・コメディ/93分

バンディダス [DVD]








タイトルについて。
最初カタカナで見た時はどういう意味かな?と思ったが
作品を観はじめて、なるほどと合点がいった。

スペイン語で "盗賊" を bandido。
その女性形が bandida、複数で las bandidas というわけだ。
英語のバンディット(bandit)は
イタリア語 banditi(無頼漢ども)に由来し、同じルーツに行きつく。

父親を殺された2人のメキシコ人女性が
タッグを組んで悪に立ち向かう作品。
意外にも、リュック・ベッソンが製作・脚本に関わっている。

とにかく、女の取っ組み合いが面白い。
特に、最初のバトルは
陽気なメキシコ音楽をバックに存分に楽しませてくれる。

女2人に強盗を指南するB・バック役のS・シェパード。
私には劇作家としての印象の強い彼だが、俳優としても活躍。
本作では、2人を助ける登場シーンこそ流石の存在感だが
それ以外では見せ場なし。

最新警備装置を備えた銀行店舗に潜入する場面。
ロープを引っ張らせている馬のカットを挟む位置がまずい。
クエンティン危機一髪の直前に挿入しては
今から起きるトラブルが全部読めてしまって全く詰まらない。
笑えるシークエンスを一つ丸々無駄にしている。

その直後、見張り役のマリアが
安易に敵の見張り役に毒矢を撃ち込む意味が不明。
銀行内を見回りに入る風でもないのに。
一人倒せばもう一人が不審がるのは必定。
マリアは考えるより行動というキャラだから、
と片づけるのは簡単だが、脚本・監督の意図は?。
いくらなんでも
ここまで思慮の足りないマリアでは
父親を殺されたその想いの深さに疑問を持ってしまう。

金塊をめぐる列車内でのアクションシーン。
CGを駆使した弾丸やナイフのスローモーションは
観る者を惹き込むに十分の魅力。
欲を言えば、もう気持ちスローにしてもらえると
画像にしっかりついていけて、存分に楽しむことができる。

ジャクソンが撃たれて死んだとき
ブーツの拍車が止まるショットは
もしかしてスピルバーグの「激突!」のラストで
トレーラーのタイヤが息絶えるように止まるカットのパロディ?

クエンティンが町に登場して以降
終幕まで引っぱるキスに関するくだりは
さして面白いとも思わないが、コメディならではのご愛嬌。

キスに限らず
お色気を狙った箇所はあれど、
観る側の私にアピールするものは微塵もなかった。

悪 vs 善の構図のはっきりしたアクションコメディで
復讐劇という作品の性格はプロットだけで十分だろうから
ジャクソンは絵に描いたような悪役であってほしい。
その点、D・ヨーカムは
黒ずくめの衣裳といやらしい髪型で何とか体裁だけは整えているが
負の要素を俳優本人があまり持ち合わせていないのか
あるいは、小さい目とあっさりした顔立ちのせいか
悪の親玉にしては、薄味でインパクトが弱い。

馬と拳銃の扱いに長けたマリアとナイフの使い手サラのコンビを
自由に奔放の翼を広げる扇だとすれば
クエンティンは扇の要となるキーパースンだ。
S・ザーンがその刑事を
温かみのある朴訥としたキャラクターに仕上げている。

マリアとサラは、配役が逆でもよかったんじゃないか。
裕福な家庭に育ったお嬢様はわがままでも品位があるものだが
サラ役のS・ハエックには、それが感じられなかった。

全体としては
勧善懲悪ドラマの果汁入り清涼飲料。
気軽に楽しめるカウチポテト向きの映画だった。

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『ベルリン・天使の詩』 [洋画(ハ行)]

「ベルリン・天使の詩」(再)(1987)★★★★☆60点
※(再):私が以前に観たことのある作品
原題: DER HIMMEL UBER BERLIN(英語題 THE WINGS OF DESIRE)
監督・製作・脚本: ヴィム・ヴェンダース
製作: アナトール・ドーマン
製作総指揮: イングリット・ヴィンディシュ
脚本: ペーター・ハントケ
撮影: アンリ・アルカン
音楽: ユルゲン・クニーパー
出演:
 ブルーノ・ガンツ(天使ダミエル)
 ソルヴェーグ・ドマルタン(マリオン)
 オットー・ザンダー(天使カシエル)
 クルト・ボウワ(ホメーロス、年老いた詩人)
 ピーター・フォーク(本人、映画俳優)
受賞:
 カンヌ国際映画祭
  ■監督賞 ヴィム・ヴェンダース
 全米批評家協会賞
  ■撮影賞 アンリ・アルカン
 NY批評家協会賞
  ■撮影賞 アンリ・アルカン
 LA批評家協会賞
  ■外国映画賞
  ■撮影賞 アンリ・アルカン
 ヨーロッパ映画賞
  ■監督賞 ヴィム・ヴェンダース
  ■助演男優賞 クルト・ボウワ
 インディペンデント・スピリット賞
  ■外国映画賞
製作・ジャンル: 独国=仏国/ドラマ・ロマンス・ファンタジー/128分

ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]








人間を見守りづづけていた天使が
空中ブランコ乗りの女性に恋して、人間界に舞い降りるというお話。

視力の低下もあって、字幕が読むのにイライラしてしまった。
特に、天使目線のモノクロ映像に、同じ白の字幕は読みづらい。
おまけに、天使のモノローグや心の声の文字量が多すぎる。

翻訳の問題もあるのだろうけど
内容的にも
市井の人たちがあんなに哲学的なことを普段考えているだろうか
と、字幕を追う煩わしさも手伝って、批判的に思ってしまった。
大衆を主人公に映画いているように見えるが
人間は美しく高貴な存在であるという
ヴェンダース監督の願望が反映されることで、
俗人を過度に美化している嫌いがある。

だが、20代でこの作品を観た時は
こんなこと微塵も感じなかった。
ということは、単純に
歳を重ねた私の思考や感受性が、
柔軟さを失っただけのことかもしれない。

本人役で出演しているP・フォークがとてもいい。
人間であることを謳歌している優しいゆとりを感じる。

ダミエルが人間になった瞬間に、世界が色つきに変わる。
私は、普段本当に色つきの世界を見ているかな。
時々散歩に出かけて感じる風に
色や香りを感じる心持ちでありたい。

理屈や作品の意図は明確。
観客が汲み取るのではなく、
頭の堅くなった人間でも感じてしまう作品がいいな。

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