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『苺とチョコレート』 [洋画(ア行)]

「苺とチョコレート」(1993)★★★★70点
原題: FRESA Y CHOCOLATE
英語題: STRAWBERRY AND CHOCOLATE
監督: トマス・グティエレス・アレア、フアン・カルロス・タビオ
製作: ミゲル・メンドーサ
原作・脚本: セネル・パス
撮影: マリオ・ガルシア・ホヤ
音楽: ホセ・マリア・ヴィティエル
出演:
 ウラジミール・クルス(ダビド、大学生)
 ホルヘ・ペルゴリア(ディエゴ、小説家)
 ミルタ・イバラ(ナンシー、ディエゴの隣人)
 フランシスコ・ガットルノ(ミゲル、ダビドのルームメイト)
 ヨエル・アンヘリノ(ヘルマン、ディエゴの友人)
 マリリン・ソラヤ(ビビアン、ダビドの恋人)
受賞: 
 ベルリン国際映画祭
  ■審査員特別賞・銀熊賞: トマス・グティエレス・アレア
製作・ジャンル: キューバ・メキシコ・スペイン/ドラマ/110分

strawberry and chocolate.jpg








 
共産主義者の大学生ダビドとゲイの小説家ディエゴの交流を
80年代はキューバのハバナを舞台に描いた作品。

物語が始まってすぐに二人が出会うオープンカフェ。
ダビドに好意を抱いて近づいたディエゴ。
そのディエゴが食べていたのが苺のアイス。
ダビドが口にしていたのがチョコレートアイス。

ストレートとゲイ。
共産主義の闘士と自由を愛する芸術家。

タイトルの "チョコレート" と "苺" はその対比を表す。

芸術を愛し、それを守る為には闘うことを厭わないディエゴ。
小説家志望でもあるダビドが
そのディエゴに感化されていくのは時間の問題。
それは観ている者にも、間もなく推し量ることができる。

冒頭で恋人に裏切られた童貞君が
自傷行為を繰り返す明るくも繊細な女性・ナンシーによって
大人へと導かれる。
思想的な側面と同時に、性に関しても世界を広げていく。

そして、オーラス。
冒頭と同じオープンカフェで、
出会った時のディエゴさながら
その台詞まで真似ながら苺アイスを頬張るダビデ。
そこにダビデの変化と成長が見てとれる温かい場面である。

映画の終盤、
ルームメイトでバリバリの共産主義闘士のミゲルが
ディエゴ宅に押し掛けてひと悶着起こすシーンがあるが、
その一件が新たなる展開への伏線かと思いきや
ダビドとディエゴが友情以上性愛未満の熱いハグを交わしたところで The End。

そういった終わり方が悪いとも
お粗末なラストシーンだとも言うわけではないのだが、
普通すぎる結末に拍子抜けしたというのが本音。

ディエゴを演じるペルゴリアは
私がニューヨークでルームシェアしていたゲイのバレエダンサーに、顔立ち・柄・仕草など、色々なところがよく似ている。
そいつは女性で言うところの"ビッチ(Bitch)"野郎だったが、
ディエゴは、それとは全く違ってとても心優しい。

キューバにおいて
同性愛者が当時どういう立場に立たされていたのか
現在はどう位置づけされているのか。
私はそういった知識を持ち合わせていないが、
体制と闘い続けていたディエゴが亡命を選択するに至るということは、同国で性の解放が進んでいなかったのが実情だったに違いない。

この映画、視点を
ディエゴにとれば、ある芸術家の純愛映画、
ダビドにとれば、ある大学生の青春映画。
 
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『M』 [洋画(ア行)]

「M」(1931)★★★★☆80点
原題: M - EINE STADT SUCHT EINEN MORDER
英語題: M
監督・脚本: フリッツ・ラング
原作: エゴン・ヤコブソン
脚本: テア・フォン・ハルボウ
撮影: フリッツ・アルノ・ヴァグナー
出演:
 ペーター・ローレ(ハンス・ベッケルト)
 グスタフ・グリュントゲンス(シュレンケラー)
 オットー・ベルニッケ(カール・ローマン警視正)
 テオドル・ロース(グローバー警部)
 エレン・ウィドマン(フラウ・ベックマン)
 インゲ・ランドグット(エルジー・ベックマン)
 フリードリッヒ・グナス(フランツ)
製作・ジャンル: ドイツ/犯罪・サスペンス/99分

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実在の殺人犯をモデルにした犯罪サスペンス。
F・ラングが初めて撮ったトーキー映画である。

連続幼女殺人に震える街。
8ヶ月に及ぶ警察の捜査も身を結ばない。
捜査が自分達にも厳しく及ぶことで、ギャング達は商売上がったり。
そこで、ギャング達が自ら犯人を捕まえようということになる。

犯人を捕まえても警察には突き出さないギャング達。
"捕まえたなら、いち早く警察に引き渡し騒動を収めたほうが
商売を警察の捜査に邪魔されることもなくなるだろう"
と私は考えたのだが、それは至極近視眼的で
"逮捕されても、精神病院行き。
程なく出所して殺人を再開すれば意味がない"
という彼らの論理の方が長期的視野に立っていて説得力がある。
ん~、賢い。

タイトルの「M」は
ドイツ語で殺人犯を意味する「Morder」
(英語ならMurderer)の頭文字。

作品中、追跡する浮浪者が
掌にチョークで書いた "M" を犯人のコートに押し付けるわけだが
"M" の意味を知らずに観ていた私にとって、
これはとても衝撃的な瞬間だった。

のちに撮影される、オーソン・ウェルズの「第三の男」にも
光と陰を巧みに使ってサスペンスを盛り上げる点で
この作品と通じるものを感じる。

警察に対し、新たな犯行を告知する声明を出すくせに
その実、驚くほど気弱に逃げ回る殺人犯ベッケルト。
その性格づけがまったく不統一。
声明文を、犯人を割り出す証拠物件と登場させたかった
という意図は分かるが
そのために、主役のキャラクターが分裂してはならない。
脚本上の欠陥であることは否めない。

その犯人に扮するローレが、ギャング達に発見された時に見せる
目を真ん丸に見開く演技に象徴されるように、
戯画的なまでに大げさな演技は
声で表情を伝えることのできなかった無声映画時代の名残りか。
また、その大芝居がこの作品の面白味の一つでもあるのだが。

殺人鬼が吹く口笛のメロディがスリル効果を上げているが、
口笛が印象に残る前に
犯人の顔を暴露してしまっているのが残念。

犯罪者たちが一堂に会した私刑を求める場に
犯人を弁護する弁護人がいるというのは不思議である。
リンチが目的なら、最初から裁きの場など設けなければいい話。

ただ、そんな暴虐に走らんとする断罪の集会に
公平な立場を貫く人物が同席している様は、
まもなくヒトラー内閣を成立させるナチの台頭に対して
冷静で客観的に見極める目を持つよう
国民に警鐘を鳴らしているようにも推測するのは深読みだろうか。

冒頭、疑心暗鬼になる民衆が
些細なことをきっかけに、無実の人間を殺人犯に仕立て上げる場面。
ラストの人民裁判による吊るし上げ。
いずれも集団の形を取って、牙を剥く点で共通している。
そこに描かれるのは、
狂気を呼び起こす集団心理の恐ろしさであり、
ファシズムへの警鐘にも思えてくる。

撮影・脚本の技術の進んだ現代から見れば
穴は沢山あるだろうが
トーキー創成期に作られた傑作であることは異論のないところ。
 
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『イル・ディーヴォ:魔王と呼ばれた男』 [洋画(ア行)]

「イル・ディーヴォ:魔王と呼ばれた男」(2008)★★☆☆☆40点
原題: IL DIVO
監督・脚本: パオロ・ソレンティーノ
製作: ニコラ・ジュリアーノ、フランチェスカ・シーマ、アンドレア・オキピンティ
撮影: ルカ・ビガッツィ
音楽: テオ・テアルド
出演:
 トニ・セルヴィッロ(ジュリオ・アンドレオッティ)
 アンナ・ボナイウート(リヴィア・ダネーゼ、アンドレオッティ夫人)
 ジュリオ・ボセッティ(エウジェニオ・スカルファリ)
 カルロ・ブチロッソ(パオロ・チリノ・ポミチーノ、予算大臣)
 フラヴィオ・ブッチ(フランコ・エヴァンジェリスティ、アンドレオッティ)
 アルド・ラッリ(ジュゼッペ・チャッラピーコ、実業家)
 マッシモ・ポポリツィオ(ヴィットリオ・スバルデッラ、代議士)
 アキーレ・ブルニーニ(アンジェリーニ枢機卿)
 ジョルジョ・コランジェリ(サルヴォ・リーマ)
 アルベルト・クラッコ(ドン・マリオ)
 ピエラ・デッリ・エスポスティ(エネア夫人)
 ロンバルド・フォルナーラ(ミケーレ・シンドーナ、銀行家)
 ロレンツォ・ジョイエッリ(ミーノ・ペコレッリ、記者)
 パオロ・グラツィオージ(アルド・モーロ、キリスト教民主党党首)
 ジャンフェリーチェ・インパラート(ヴィンチェンツォ・スコッティ)
 オラツィオ・アルバ(ガスパレ・ムトロ)
 クリスティーナ・セラフィーニ(カテリーナ・スターニョ)
受賞:
 カンヌ国際映画祭
  ■審査員賞 パオロ・ソレンティーノ
 ヨーロッパ映画賞
  ■男優賞 トニー・セルヴィッロ
製作・ジャンル: イタリア/ドラマ・伝記/110分

il divo.jpg

当初、未公開だったが、
"イタリア映画祭2009" で本邦初上映となった。

マフィアとの癒着や暗殺事件への関与を取り沙汰された
イタリアの政治家、G・アンドレオッティ。
彼が大統領選に敗れ、数々の事件で起訴されるまでを描いた映画。

アンドレオッティという政治家は、
長らく、イタリア政財界をはじめ、法曹界や教会など
イタリア社会を牛耳っていたと言って過言でない存在だったようだ。
権勢の規模や影響力を持った分野に違いはあるだろうが、
日本で言えば、
ロッキード事件への関与で逮捕され "目白の闇将軍" と揶揄された
故・田中角栄氏、といったところだろう。

私は、イタリアは勿論、外国の近代・現代政治史に暗い。
政治に疎い連中が、こういった作品を観る場合、
春先にロードショーを観た
「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」と同様のことが言える。
つまり、
表面的な史実やエピソードを並べられても、面白くも何ともない。
内幕に見る駆引きや工作を
ドラマチックに描いて見せてくれないことには、
怒涛のように登場する人名に押しつぶされ、
観る気を失うばかりである。
その名が耳慣れない外国人の名前であれば尚更である。

一方、セルヴィッロ以下の俳優陣は
「マーガレット~」でサッチャーを演じたM・ストリープ同様
自分たちが扮した実在の人物像を研究し
外見やその所作を、微にいり細にいり似せているであろう。
その点は、実在の人物を知らずとも
セルヴィッロが戯画的ともいえる形で演じる
アンドレオッティの立ち居振る舞いに如実に表われている。
史実を知らないと、結局
そういった瑣末的な部分にしか面白味を見出せない。

実名を出して描くからには
フィクションのように、裏打ちのない筋を追うことができないため
突っ込んだ描き方もできないというジレンマが付きまとう。
松本清張の「けものみち」や山崎豊子の「白い巨塔」のような作品に
仕上がるのなら諸手を挙げて歓迎なのだが…

ちなみに、
魔王ことアンドレオッティはいまだ存命である。
 
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『あなたになら言える秘密のこと』 [洋画(ア行)]

「あなたになら言える秘密のこと」(2005)★★★★☆80点
原題: LA VIDA SECRETA DE LAS PALABRAS
英語題: THE SECRET LIFE OF WORDS
監督・脚本: イザベル・コイシェ
製作: エステル・ガルシア
製作総指揮: ジャウマ・ロウレス、アグスティン・アルモドバル
撮影: ジャン=クロード・ラリュー
プロダクションデザイン: ピエール=フランソワ・ランボッシュ
衣装デザイン: タティアナ・エルナンデス
編集: イレーヌ・ブレクア
出演:
 サラ・ポーリー(ハンナ・アミラン)
 ティム・ロビンス(ジョゼフ)
 ハビエル・カマラ(サイモン、コック)
 エディ・マーサン(ヴィクター、精錬所職員)
 スティーヴン・マッキントッシュ(シュルツァー)
 ジュリー・クリスティ(インゲ)
 レオノール・ワトリング(ジョゼフの親友の妻)
 ダニエル・メイズ(マーティン、海洋学者)
 スヴァレ・アンケル・オウズダル(ディミトリ)
 ダニー・カニンガム(スコット、機関士)
 ディーン・レノックス・ケリー(リアム、機関士)
 エマニュエエル・イードーウ(アブドゥル、掃除夫)
製作・ジャンル: スペイン/ドラマ/114分

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「死ぬまでにしたい10のこと」のコイシェ監督が
S・ポーリーを再び主役に起用。
他人との交流を避けて生活する孤独な女性の、
心の傷とその再生を描く。

常に、卸したての固形石けんしか使わず
食べるのは、チキンとリンゴと白米だけ。

真面目に仕事に取り組み、ストイックに暮らす彼女は、
ふとしたきっかけで
海に浮かぶ油田掘削所で大火傷を負った男を看護することになる。

掘削所に集う面々は、実直で優しい人たちの集まり。
私もこういう人たちと一緒なら、心地いいだろうなと思う。

海の保護に献身しようとするマーティン。
そのひたむきさに感激するハンナの様子に、
彼女の優しさと、心に刻まれた傷の深さをうかがわせる。

火傷で一時的に視力を失っているジョセフは
音と匂いの想像力の中で、
軽口をたたきながら、ハンナとの心の距離を縮めていく。

泳げないばかりに味わった、海での辛い幼少体験を
ハンナに語ったジョセフ。
ハンナは、そんなジョセフに心を許し
クロアチア戦争で、自国兵に監禁・レイプされた体験を語りはじめた。
シャツを脱ぎ、
白い肌に刻まれた無数のナイフによる切り傷に触れさせるハンナ。
心のすべてをジョセフの胸に預けた瞬間である。

ジョセフが病院へ移動となり、
ハンナは元の場所へと戻っていく。

ジョセフは、ハンナのカウンセラーの元を訪ね
ハンナを迎えに行く。

共に生きることを求めるジョセフに対し、
"自分にはいつか涙が止まらなくなる日が訪れ
涙の洪水で2人とも溺死するにちがいない"
と、拒む彼女。
"泳ぎを覚える" というジョセフの返しが利いている。

顔がちっちゃい上に、195cmという長身のT・ロビンス。
(ニューヨークの小さい劇場で、彼の一人舞台を観たが
本当に、圧倒されるほど背が高い)
抱き合う2人の身長差が、また何とも言えず微笑ましい。

2人が一緒になって万事解決、にせずに
子供も生まれた結婚生活の中で、
少しずつ、そして確実に、ハンナの傷は癒されていくだろう
という示唆に、
全編を通じて流れる、作り手の静かで優しい目線を感じる。

これは、「死ぬまでに~」しかり
コイシェ作品に共通したスタイルである。
どちらも素敵な映画だが、私はこちらの方が好きだな。

筋には関係ないが
ハンナが立ち寄るレストランに、日本語の歌が流れている。
"神山みさ" なる女性歌手の「けんかは嫌い」という曲らしい。
また、ジョセフが語る話の一つに
日本人が夢をプログラムできる枕を発明、というのも登場する。
コイシェ監督は日本びいきなのだろうか。
「死ぬまでに~」の主人公・アンは
音楽の代わりに、中国語を聴いていたから、
アジアンテイストがお好きなのかも。
 
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『アナザー・カントリー』 [洋画(ア行)]

「アナザー・カントリー」(1983)★★★★☆80点
原題: ANOTHER COUNTRY
監督: マレク・カニエフスカ
製作: アラン・マーシャル
製作総指揮: ロバート・フォックス
原作: ジュリアン・ミッチェル
脚本: ジュリアン・ミッチェル
撮影: ピーター・ビジウ
音楽: マイケル・ストーン
出演:
 ルパート・エヴェレット(ガイ・ベネット)
 コリン・ファース(トミー・ジャド)
 ルパート・ウェンライト(ドナルド・デヴニッシュ)
 マイケル・ジェン(バークレー)
 トリスタン・オリヴァー(ファウラー)
 ケイリー・エルウィズ(ジェームズ・ハーコート)
 ジェフリー・ベイトマン(イヴゲニ)
 フレデリック・アレクサンダー(ジム・メンジース)
 エイドリアン・ロス・マジェンティ(ウォートン)
 フィリップ・デュピイ(マーティノ)
 ジェフリー・ウィッカム(アーサー)
 ロバート・アディ
受賞:
 カンヌ国際映画祭
  ■芸術貢献賞 ピーター・ビジウ(撮影)
製作・ジャンル: 英国/ドラマ・青春/92分

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1930年代のイギリス。
英国パブリックスクールの最高峰イートン校を舞台に
展開する権力闘争と同性愛をテーマに描く。
まさに国家の縮図を描いた本作、
私たちが観るのは、原題どおり、"もう一つの国" である。

また、主人公ガイ・ベネットは、
ガイ・バージェスという
実在した英国人スパイがモデルとなっている。

教会や学園が舞台となる英国映画を観るにつけ
この国の伝統の荘厳・重厚・格式といったものを印象づけられる。
とともに、その裏に
束縛・差別・形式・抑圧など負の遺産を大いに感じざるを得ない。

パブリックスクールの寮生活は
日本人が中高の男子校に描くイメージとはかなりかけ離れている。
禁断の同性愛に身を任せる者も少なくないだろうし、
一流になればなるほど、異性との隔絶も厳しくなるだろうから
当然の帰結かもしれない。

主人公のベネットもホモセクシュアル。
左翼学生・ジャドとの固い友情が
いかにも青春物で、何とも心地よい。

ファウラーは、扮したT・オリヴァーの外見も手伝って、
権力主義者、あるいは台頭してくるファシストの権化として
見事な役回りを演じている。

ベネットに扮するのは、
のちに、「理想の結婚」のアーサー・ゴーリング役で
その俳優資質の確かだったことを証明するR・エヴェレット。

片や、その親友ジャドを演じるは、
「英国王のスピーチ」でオスカーを手にしたC・ファース。

ちなみに、この作品は舞台の映画版であり、
舞台初演キャストを紹介すると、
ベネットは、映画と同じエヴェレット、
ジャドは、これが舞台デビューとなったケネス・ブラナー。
ファースも映画化直前、舞台で主役ベネットを演じている。
英国の名優を多数輩出した名作舞台といっていい。

ベネットにせよ、ジャドにせよ、
迎合することを拒み、その真っすぐさを貫くがゆえに、
既存の階級社会からはじき出され、
スパイ活動やスペインの内乱に身を投じていくことになる。

精神こそ美しいが、その末路に悲しさを覚えずにはおかない。
一口に、俳優と言うが
舞台を主戦場に置く "役者" と呼ばれる我らに
どこかしら通じるものを感じるのは私だけだろうか。
ただ、青臭いってだけかも分からないが…
 
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『アサルト13 要塞警察』 [洋画(ア行)]

「アサルト13 要塞警察」(2005)★★☆☆50点
原題: ASSAULT ON PRECINCT 13
監督: ジャン=フランソワ・リシェ
製作: パスカル・コシュトゥー、ジェフリー・シルヴァー、ステファーヌ・スペリ
製作総指揮: ドン・カーモディ、ジョセフ・カウフマン、セバスチャン・クルト・ルメルシエ
脚本: ジェームズ・デモナコ
オリジナル脚本: ジョン・カーペンター
撮影: ロバート・ギャンツ
編集: ビル・パンコウ
音楽: グレーム・レヴェル
出演:
 イーサン・ホーク(ジェイク・ローニック、13分署巡査部長)
 ローレンス・フィッシュバーン(マリオン・ビショップ、ギャングのボス)
 ガブリエル・バーン(マーカス・デュヴァル、組織犯罪対策班警部・ポートノウの上司)
 ドレア・ド・マッテオ(アイリス・フェリー、13分署警察秘書)
 ブライアン・デネヒー(ジャスパー・オーシェア、13分署老巡査部長)
 マット・クレイヴン(ケヴィン・キャプラ、13分署警官)
 ピーター・ブライアント(ホロウェイ、13分署警部補)
 キム・コーツ(ローゼン、13分署警官)
 マリア・ベロ(アレックス・サビアン、精神科医)
 ジョン・レグイザモ(ベック、強盗犯)
 ジャ・ルール[ジェフリー・'ジャ・ルール'・アトキンス](スマイリー、偽ブランド品職人)
 アイシャ・ハインズ(アンナ、女ギャング)
 フルヴィオ・セセラ(レイ・ポートノウ、潜入捜査官)
 カリー・グレアム(マイク・カハネ)
 ヒュー・ディロン(トニー)
製作・ジャンル: 米国=仏国/アクション・サスペンス/110分

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ジョン・カーペンター監督の傑作アクション
「要塞警察」のリメイク作品。

オリジナルで、主役の警官の名前だったビショップは
本リメイク作品では、囚人であるギャングのボスに付いている。
さらに、事件の発端が
オリジナルのように、警察や護送囚以外の第3者にあるのではなく、
ビショップこそが外敵の襲撃を受ける元凶となれば、
オリジナルを知る者は、尚ほくそえむ。

ビショップに扮するのは
「マトリックス」シリーズで一躍有名になったL・フィッシュバーン。
その体格と目立つルックスで
ギャングのボスとしての大物感を醸し出している。

リメイク(以下、改作)と言っても、
オリジナル(以下、原作)と異なる点は多い。

敵が銃撃戦のあった痕跡を消して平常を装おうとしても
もし近隣住民や警察が無関心でなければ、
救援を要請できる環境であった原作に対して、
改作では、外部から遮断され孤立を招く原因も
吹雪や電波・通信妨害など、万人が被る不可避なものだけ。
事件終結の鍵にもなりうる人的要素が排除された形である。

ビショップは事件の元凶だが
襲撃に来たのがビショップを奪還しようとする手下ではなく
ビショップを亡き者にせんとするポートノウの部下、
言い換えればデュヴァルの部下たちだった。
事件の裏には、
ギャングと結託した警察組織の汚職が潜むというサスペンス。
ビショップだけでなく、13分署のメンバーまでも狙われるのには、
汚職を知ることで口封じの対象に加えられた
という明確な理由が存在する。

そのほか、改作における、原作との違いを列挙してみる。
・分署内の銃器・弾薬もはるかに豊富。
・分署の建物内外の攻防ではなく、最後には
 生き残り全員が分署の建物を飛び出し、野外での戦闘となる。
・脱走を図る囚人たち、味方を敵に売る者など、
 分署内のメンバーに裏切り者が出現する。

逆に、
敵の求める人物一人を引き渡せば済むところを、
"助けを求めてきた人間を見殺しに出来ない"
"警官殺しを野放しに出来ない" の具体的事実の違いこそあれ、
主役のとる行動が、警官としての正義感に支えられている点は
両作品に共通している。

相違点は、プロット上のものにとどまらない。
攻めてくるのは汚職警官の集団、
と敵の氏素性がはっきりしている本作には
実態や性格が知れない異様性は微塵もない。

ストーリーが展開する前に、
過去の事件によってトラウマを抱えているなど、
主役のプロフィールが非常に細かく前置きされているのも
大きく違う点の一つ。

緊迫した対峙状況よりも
登場各人のドラマや心理的な駆け引きに重きが置かれている。
カーペンター作品とは全くテーストの違う
新作のクライム・サスペンスと考えるのが適当だろう。

ただし、
瑣末的なドラマが多い上に、どのドラマをとってみても中途半端。
"襲撃側 vs 分署側"="悪 vs 正義" という大きな構図の中に、
ビショップ vs ローニック、密告や脱走を企む者達 vs ローニック、と
分署内に、小さな "悪 vs 正義" の構図を重ねることで
軸となる対峙関係が不明瞭になっては本末転倒。

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『海を飛ぶ夢』 [洋画(ア行)]

「海を飛ぶ夢」(2004)★★★★☆☆80点
原題: MAR ADENTRO
英語題: THE SEA INSIDE
監督・脚本・製作総指揮・音楽・編集: アレハンドロ・アメナーバル
製作総指揮: フェルナンド・ボバイラ
脚本: マテオ・ヒル
撮影: ハビエル・アギーレサロベ
プロダクションデザイン: ベンハミン・フェルナンデス
衣装デザイン: ソニア・グランデ
出演:
 ハビエル・バルデム(ラモン・サンペドロ)
 ベレン・ルエダ(フリア、弁護士)
 クララ・セグラ(ジェネ、尊厳死支援団体員)
 ロラ・ドゥエニャス(ロサ)
 マベル・リベラ(マヌエラ、ホセの妻)
 セルソ・ブガーリョ(ホセ、ラモンの兄)
 タマル・ノバス(ハビエル、ホセの息子)
 ジョアン・ダルマウ(ホアキン、ラモンの父)
 フランセスク・ガリード(マルク、弁護士)
受賞:
 アカデミー賞
  ■外国語映画賞
 ヴェネチア国際映画祭
  ■男優賞 ハビエル・バルデム
  ■審査員特別賞 アレハンドロ・アメナーバル
 ゴールデン・グローブ賞
  ■外国語映画賞
 ヨーロッパ映画賞
  ■監督賞 アレハンドロ・アメナーバル
  ■男優賞 ハビエル・バルデム
 インディペンデント・スピリット賞
  ■外国映画賞 監督:アレハンドロ・アメナバール
 放送映画批評家協会賞
  ■外国語映画賞
製作・ジャンル: スペイン/ドラマ/125分

海を飛ぶ夢 [DVD]








実在したラモン・サンペドロの手記『地獄からの手紙』を基に
事故で四肢麻痺となった主人公が、尊厳死を求める姿を描く。

主演は、ペネロペ・クルスの夫にして
オスカーはじめ、数々の映画賞を手にしているハビエル・バルデム。

尊厳死を求めるラモンに協力することになる弁護士フリア。
彼女もまた、
脳血管性痴呆を患い、少しずつ体の自由を奪われていく。
体のハンデを負う者同士、気持ちを通わせ恋心を抱くのは
至極当然の流れに思う。

一度だけ描かれる2人のキスシーンは
エロティックなまでに美しく、時間が止まったかのよう。

法廷へと出かける道中、様々な景色が車窓を飛びすぎていく。
病床で、空を自由に飛びまわる夢を見つづけるラモンにとって
わずかながら、夢が現実に姿を変えた瞬間だ。

ラモンが書き溜めた詩の出版を手伝うフリア。
"本当に愛するからこそ、できるのだ" と
見本品を届ける日に自殺幇助を決行する、と約束する。
いくら本人が望むからと言って、愛する人を死に追いやることは
私にはどうしても想像つかなかった。
だが結局、見本は郵送され、彼女は姿を現わさなかった。
約束を反故にしたフリアの気持ちならば、理解するに難くない。

ラモンが自宅を離れ死の旅立ちを出かけるシーン。
今生の別れを前に
マヌエラ、ホセ、ハビが見せる三者三様の悲しみが胸に詰まる。
以前、捧げられた詩の意味も理解できなかったハビが
乞われてラモンをハグする場面には、
辛い思いに喉元を締めつけられる。

自殺に臨むラモンとの最後の会話の中で
ロサは彼にキスをするのだが、唇にではなく額にである。
フリアとのラブシーンとは、対照的であり
ここに、2人の女性の、ラモンとの関係の違いが
象徴的に表現されている。

ラモンの死後、ジェネは彼がフリアに残した手紙を届けに行くが
視力を失い痴呆の進んだフリアは、
ラモンが誰であるかも覚えていはいなかった。
ともに死ぬことさえ誓い合った間柄なのに
最後の最後まで救いようのない、残酷な話。

ただただ、切ないばかりの内容だが、
感覚があるはずないのに
"足が痒くて我慢できない" とジョークを飛ばすラモンの
優しさとユーモアが唯一の救いだろうか。
これだけを取り上げれば
彼も、生に対して前向きのようにも見える。

ラモンが死への道のりを歩んでいく一方で、
恋人を得、妊娠・出産するジェネ。
作品全体を通じて、対照的に描かれる運命の皮肉も
"生きること" の意味を考えさせるファクターになっている。

登場人物全員の立ち位置とキャラクターが明確。
俳優たちの演技も真実味があり、
見事なアンサンブルを織り成している。

この映画を通して
悔いのない生を生きようと思いを新たにはしたが、
尊厳死をどう扱うか、認めるべきか否かについては
どうにも判断がつかない。

生きることが、周りの人たちの負担や迷惑にしかならず
かといって、自分からは能動的に何をしてやることもできない。
自分がその立場になった時はじめて
苦悩を実感し、意見を持てるのだろう。
なのに、
それを法的・宗教的に判断し取り仕切るのは "健常者"、という
根本的な不合理を排除できない、非常に難しい問題である。

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『アダムス・ファミリー2』 [洋画(ア行)]

「アダムス・ファミリー2」(再)(1993)★★★☆☆60点
※(再):私が以前に観たことのある作品
原題: ADDAMS FAMILY VALUES
監督: バリー・ソネンフェルド
製作: スコット・ルーディン
製作総指揮: デヴィッド・ニックセイ
キャラクター創造: チャールズ・アダムズ
脚本: ポール・ラドニック
撮影: ドナルド・ピーターマン
音楽: マーク・シェイマン
出演:
 ラウル・ジュリア(ゴメス・アダムス)
 アンジェリカ・ヒューストン(モーティシア・アダムス)
 クリストファー・ロイド(フェスター・アダムス)
 クリスティナ・リッチ(ウェンズデー・アダムス)
 ジミー・ワークマン(パグズリー・アダムス)
 キャロル・ケイン(グラニー・アダムス)
 カレル・ストリッケン(ラーチ、執事)
 クリストファー・ハート(ハンド)
 ジョーン・キューザック(デビー・ジリンスキー)
 ケイトリン・フーパー(ピューバート・アダムス)
 クリステン・フーパー(ピューバート・アダムス)
 ダナ・アイヴィ(マーガレット・アダムス、イットの妻)
 ジョン・フランクリン(イット・アダムス、ゴメスの従兄弟)
 ピーター・マクニコル(ゲイリー・グレンジャー、キャンプチパワのオーナー兼代表)
 クリスティーン・バランスキー(ベッキー・マーティン・グレンジャー)
 デヴィッド・クラムホルツ(ジョエル・グリッカー)
 メルセデス・マクナブ(アマンダ・バックマン)
 サム・マクマレー(ドン・バックマン、アマンダの父)
 ハリエット・サンソム・ハリス(エレン・バックマン、アマンダの母)
 バリー・ソネンフェルド(ジョエルの父)
 ジュリー・ホルストン(ジョエルの母)
 ネイサン・レイン(巡査部長)
 キャロル・ハンキンス(ディメンシア、マーガレットの一家の子守)
受賞:
 ラジー賞(ゴールデン・ラズベリー賞)
  ■ワースト音楽賞 「Addams Family (Whoomp!)」
製作・ジャンル: 米国/ホラー・コメディ/94分

アダムス・ファミリー2 [DVD]








アダムス・ファミリーの映画化第2弾。
子守として乗り込んできた殺人犯のデビーをめぐる一大騒動。

キャンプ場でウェンズデーたちのライバルとなるアマンダは
前作で、一家が屋敷を追い出された折に
ウェンズデーとパグズリーが遭遇するガールスカウトとして登場し
本作の伏線となっている。

また、アダムス家のおばあちゃんがキャスト替わり。

レストランで繰り広げられる
アダムス夫妻のアクロバティックなダンスが最高。

ウェンズデーが強要されてする
"朝起きると整形した鼻が元の形に" という怪談話は
アメリカらしいブラックユーモアで可笑しい。

デビーの最期は、感電して粉と化すというもの。
グロい死が登場しないのがコメディならでは。

アダムス一家が特異な存在だけに
デビーやキャンプのメンバーたちに苦しんでいるという印象トが薄く
それゆえ
解決に当たっても痛快さ・カタルシスと言ったものが得られない。

アダムスの子どもたちが、
デビーに邪魔者としてキャンプ送りとなる設定は筋は通るが
キャンプの話が枝葉的になってしまい
デビーの悪行の本線から外れてしまっている点が詰まらない。
常にシニカルなウェンズデーの恋愛挿話となっているのが救いか。

前作に続いて、音楽はラジー賞を獲得。
過去から学ばず同じ轍を踏んでしまった。

シリーズ化が進むことを望んだが
R・ジュリアの急死により、2作にとどまったことが悔やまれる。

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『アダムス・ファミリー』 [洋画(ア行)]

「アダムス・ファミリー」(再)(1991)★★★★85点
※(再):私が以前に観たことのある作品
原題: THE ADDAMS FAMILY
監督:バリー・ソネンフェルド
製作:スコット・ルーディン
製作総指揮:グレアム・プレイス
キャラクター創造:チャールズ・アダムズ
脚本:キャロライン・トンプソン、ラリー・ウィルソン
撮影:オーウェン・ロイズマン
音楽:マーク・シェイマン
主題歌:M・C・ハマー「Addams Groove」
出演:
 ラウル・ジュリア(ゴメス・アダムス)
 アンジェリカ・ヒューストン(モーティシア・アダムス)
 クリスティナ・リッチ(ウェンズデー・アダムス)
 ジミー・ワークマン(パグズリー・アダムス)
 ジュディス・マリナ(グラニー・アダムス)
 クリストファー・ロイド(フェスター・アダムス/ゴードン・クレイヴン)
 カレル・ストリッケン(ラーチ、執事)
 クリストファー・ハート(ハンド)
 エリザベス・ウィルソン(アビゲイル・クレイヴン/Dr. グレタ・ピンダーシュロス)
 ダン・ヘダヤ(タリー・アルフォード、アダムス家の顧問弁護士)
 ダナ・アイヴィ(マーガレット・アルフォード、タリーの妻)
 ポール・ベネディクト(ウォーマック、判事・アダムス家隣人)
 モーリーン・スー・レヴィン(フローラ・アモール)
 ダーリーン・レヴィン(ファウナ・アモール)
 ジョン・フランクリン(イット、ゴメスの従兄弟)
 トニー・アジート(ディジット・アダムス)
 ダグラス・ブライアン・マーティン(デクスター・アダムス)
 スティーヴン・M・マーティン(ドナルド・アダムス)
受賞:
 ラジー賞(ゴールデン・ラズベリー賞)
  ■ワースト音楽賞「Addams Groove」
 アボリアッツ・ファンタスティック映画祭
  ■20回記念賞
製作・ジャンル: 米国/ホラー・コメディ/100分

addams.jpg

チャールズ・アダムスの怪奇漫画を映画化。
一般的にも、TVアニメ「アダムスのお化け一家」で馴染みがある。

25年前に生き別れになった兄フェスター。
フェスターに瓜二つのゴードンが
アダムス家の財産強奪を目ろむ顧問弁護士と金貸しらの策略で
本人としてアダムス家に送り込まれる。

善悪・正邪逆転させた言葉遣いが心地よい。

この実写化の成功の第一の要因は
何をおいても、ファミリーのキャスティング以外にない。
セクシーで濃い顔立ちのジュリア、
たおやかな物腰とメイクでその美しさがいや増すヒューストン。

そして
カリカチュアされた役で名を馳せるロイドは
その扮装ぶりがワンパターンでないことをこの作品で実証している。

ハンドは特異な存在である。
顔のない役だが、私もやってみたいと思わせるだけの魅力がある。
オフィスでデスクにメールを配る様はお見事爽快。

屋敷内のさまざまな仕掛けが面白い。
書棚から通じた小部屋にぶら下がる拷問具のようなたくさんの吊り金。
秘密の小部屋へと導くのはただ一本。
私はこの仕掛けが一番面白かった。

子どもたちの学芸会と財産奪取の計画。
その狭間で悩みながらも、
無意識のうちに、アダムスの血が騒ぎ学校へ駆けつけるフェスター。
観ていて嬉しい瞬間である。

フェスターが嵐を呼ぶ本から閃く稲妻に打たれて記憶を甦らせるのは
単純だが巧みに練られた物語の収束だ。

ハマーの曲「Addams Groove」がラジー賞を受賞したことが
味噌をつけた。

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『オーバー・ザ・ムーン』 [洋画(ア行)]

「オーバー・ザ・ムーン」(未)(1999)★★★☆70点
※(未):日本未公開作品
原題: A WALK ON THE MOON
監督・製作: トニー・ゴールドウィン
製作: ダスティン・ホフマン、ジェイ・コーエン
脚本: パメラ・グレイ
撮影: アンソニー・リッチモンド
音楽: メイソン・ダーリング
出演:
 ダイアン・レイン(パール・カントロウィッツ、妻)
 リーヴ・シュレイバー(マーティ・カントロウィッツ、夫)
 ヴィゴ・モーテンセン(ウォーカー・ジェローム、ブラウスのセールスマン)
 アンナ・パキン(アリソン・カントロウィッツ、娘)
 ボビー・ボリエロ(ダニエル・カントロウィッツ、息子)
 トヴァ・フェルドシャー(リリアン・カントロウィッツ、姑)
 ジョセフ・ペリノ(ロス・エプスタイン、アンナのボーイフレンド)
製作・ジャンル: 米国/ロマンス/109分

オーバー・ザ・ムーン [DVD]








1969年のアメリカを舞台に
とある避暑地のキャンプ場で過ごす家族たちの物語。
D・ホフマンがプロデュース。

アポロの月面着陸の瞬間を見んがために
キャンプ中の人が集まって、テレビ中継に釘付けになっている姿や
ウッドストックでコンサートに興じる様子など
映画の時代背景を描かれているのも一興。

失った青春を悔やみ、人生を諦めたくないパール。
夢を諦め、平凡な生活を是とするマーティ。

そんな満たされないワンパターンの生活の中で
パールはふとブラウス売りのウォーカーと出会い、
ごく自然のうちに情事へと踏み出していく。

ありふれた話だが
必要以上にエロチックなショットを持ち込まず
揺れ動く各人の細かい心のひだを丁寧に描き出している。
特に、中年になりますます魅力的なD・レインは私のお気に入り。
「運命の女」で再評価される演技の一端はすでに開花していた。

夫が夢をあきらめた原因が自分にあったことを知るパール。
だが、一度ついた情熱の炎は静かでも、容易に消せなかった。

思春期に揺れる娘役をA・パキンが好演している。
娘の妊娠をつい不倫の言い訳にしてしまうパールと
それに傷つくアリソン。
歩み寄り理解し合おうとする母子の姿にジンときた。
性交渉を野球に例えるところなど、いかにもアメリカらしい。

ハチ騒動を機に
登場人物が一堂に会するシーンは本作のクライマックス。

私も、都会のせわしない生活に追われていると
時々、こうした古きよき時代の穏やかな地方暮らしが羨ましくなる。
ドラマチックではないが、人の絆を見つめさせてくれる良作。

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