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『ザ・ヒットパレード~ショウと私を愛した夫~』 [舞台]

「ザ・ヒットパレード~ショウと私を愛した夫~」(2007)★★☆☆☆40点
演出: 山田和也
脚本: 鈴木聡
音楽: 宮川彬良
演奏: 宮川彬良とザ・ヒットパレード
美術: 伊藤保恵
照明: 高見和義
音響: 山本浩一
振付: 川崎悦子
衣裳: 黒須はな子
ヘアメイク: 宮内宏明
舞台監督: 小林清隆、幸光順平
エグゼクティブ・プロデューサー:渡辺ミキ
出演:
 原田泰造(渡邊晋 "シン")
 戸田恵子(渡邊美佐 "ミサ")
 堀内敬子(伊藤ユミ、ザ・ピーナッツ "ツキコ")
 瀬戸カトリーヌ(伊藤エミ、ザ・ピーナッツ "ヒデヨ")
 北村岳子(野田洋子、美佐の友人)
 杉崎真宏(杉下、TVプロデューサー)
 和田正人(堀内、渡辺プロダクション社員)
 升毅(山崎浩、晋の友人)
 土屋礼央(植木等)
 RAG FAIR(クレージーキャッツ)
収録: 2007年7月 東京 ル テアトル銀座
番組: NHKミッドナイトステージ館 舞台「ザ・ヒットパレード~ショウと私を愛した夫~」
チャンネル: BS2
放送日: 2010年1月30日(土)
放送時間: 午前0:50~3:39(解説5分+本編164分)
ジャンル: 現代劇・ミュージカル

MUSICAL ザ・ヒットパレード ショウと私を愛した夫 [DVD]








前向きな人生を歩んだ渡辺夫妻を演じる上で
原田泰造を抜擢したのは正解かもしれない。

泰造の歌に関しては
努力はしたんだろうが、予想通りいただけない。

山崎を演じる升毅は
助演というポジションをしっかりこなして
主演2人を文字通り助けている。

バンス(advance "前借り")の歌では
晋と美佐が服に付いたパンを引きちぎって山崎と洋子に与えるが
戸田恵子がアンパンマンの声をアテているからだと思われるが
面白い趣向でもなく、完全にスベっている。

戸田は上手い。
歌も上手ければ、見せ方も知っている。
ドラマ・声優・舞台と、何でも見事にこなす彼女には感服する。
ただ、歌でも演技でもそうだが
上手すぎて、歌い上げ演じ上げてしまうために
彼女の役に共感できない。
一番の理由は、戸田恵子という女性が強い人間だからだ。
この舞台でも、孤独を歌に載せて吐露する場面があるが
やはり孤独などとは無縁に見えてしまう。

ちなみに「ノッティングヒルの恋人」などの吹替えで
現場をご一緒させていただいたことがあるが
ドラマなどで見るそのままに、サバけていて前向きな方。
いかにも後ろは振り返らないタイプだ。

瀬戸カトリーヌは、
普段トーク番組でも関西弁丸出しで話すように
歌にも少し耳障りな癖がある。

戸田、瀬戸。
意味合いは全く違うだが、俳優は普段がいかに大切かが分かる。

堀内に関しては、映画「THE 有頂天ホテル」でも触れたが
歌が上手いだけで、演技的に色がない。
他のミュージカルに引っ張りだこなのか、降ろされたのか
再演には出演していないようだ。
元四季というだけで、ちやほやされるのはいつまでか。

とにかく、
歌を並べ倒せば、ミュージカルと称していいのか!?
というのが感想。
欧米から本場のミュージカルが頻繁に来日し
ミュージカルがごく普通に劇場にかかる昨今なのに
和製ミュージカルは未だ成熟せず。
一介のバンドマンから一大プロダクションを興した
成功物語だからといって
感動的なドラマになると考えているのであれば安易すぎる。

音楽ショーとしても中途半端で
オリジナルの歌手によらない懐メロを聴けるだけでOKなんていう
懐古主義のold fanだって満足させられないだろう。
特に、RAG FAIRによるメドレーは一切不要。

企画は夫妻の娘・渡辺ミキ。
ナベプロ物語だから当たり前だが
ナベプロの歌ばかりをぶち込んで
主役の原田をはじめ、
杉崎、和田、RAG FAIRなど、ナベプロのタレントで固めている。
ナベプロの、ナベプロによる、ナベプロのための舞台。

戸田の抜群の技術と、升毅の堅実さを確認した以外
何も残らない作品だった。

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『高き彼物(かのもの)』 [舞台]

「高き彼物(かのもの)」(再)(2009)★★★★☆75点
※(再):私が以前に観たことのある作品
作: マキノ ノゾミ
演出: 高瀬久男
美術: 柴田秀子
照明: 古宮俊昭
音響: 松本昭
衣裳: 竹原典子
舞台監督: 鈴木政憲
出演:
 加藤健一(猪原正義)
 小泉今日子(野村市恵)
 占部房子(猪原智子)
 石坂史朗(徳永光太郎)
 海宝直人(藤井秀一)
 鈴木幸二(片山仁志)
 滝田裕介(猪原平八)
収録: 2009年11月 東京 下北沢・本多劇場
番組: NHKミッドナイトステージ館 舞台「高き彼物(かのもの)」
チャンネル: BS2
放送日: 2010年1月23日(土)
放送時間: 午前0:45~午前3:05(140分)
ジャンル: 現代劇

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加藤健一事務所が小泉今日子を迎えて挑んだマキノノゾミの名作。

2000年9月に
六本木・俳優座劇場で鈴木裕美演出の初演を観ている。
出演は、
高橋長英・藤本喜久子・森塚敏・浅野雅博・歌川椎子・増沢望・酒井高陽だった。

演出よりも、出演俳優の演技の質によるものだと思うが
総じて、初演よりも話が分かりやすかった。
あるいは、
単に私の初演の記憶がおぼろげになっているだけかもしれないが
やはり加藤健一の実力に拠るところが大きいのだろう。

年取ったとはいえ、加藤は2枚目だし
高橋長英のような田舎っぽさは出ない。

だが、彼の張りのありすぎる発声や抜群の間合いは、
喜劇的側面では流石と言うべく見事に笑いを引き出してくる。
周りの役者がそれに釣り合うだけの喜劇的技量がないために
逆に、全体的なバランスの悪さが気になるくらいだ。

また、そのお得意の間合いで押し切りすぎて
真剣味を出すべき場面がつぶれてしまっている箇所も多い。

ただ、教職を辞した真相を明かす一人語りは素晴らしい。
一人芝居「審判」でも見せた
目に浮かぶような描写と説得力には脱帽。
観客を惹きつけて放さない彼の大きな魅力の一つで
私もそのファンの一人だ。

Kyonは頑張りすぎ。
笑いを取りにいく意識が強すぎて、
ここぞとばかりに声を張り上げるのが少し痛々しい。
笑いだけでなく、決然とすべきところでもただの大声。
力強い台詞=声を張り上げる、だけではないことを学ぶ必要がある。
これは、演出家の
元アイドルに対する遠慮、あるいは怠慢でもある。
それでも "よく頑張りました" とハンコを押してあげたい。

片山という役は
出番少ないのにおいしくていいなあ、とつい役者目線で見てしまう。
私ならもっとやれるのに…と出しゃばりたくなる。

秀一、平八については
どこという不可があるわけでもないが
正直、
青年座の故・森塚さん、文学座の浅野さんの方がよかった。

9年ぶりの本作との再会は有意義なものだった。

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『国盗人』 [舞台]

「国盗人(くにぬすびと)」(再)(2007)★★★☆70点
※(再):私が以前に観たことのある作品

▽インタビュー「演劇はいま」
ゲスト: 野村萬斎
案内: 山口宏子

▽舞台「国盗人」
原作: ウィリアム・シェイクスピア
作: 河合祥一郎
演出: 野村萬斎
装置: 林光
出演: 
 野村萬斎(悪三郎、白薔薇一家の三男)
 白石加代子(杏、赤薔薇王子の妃/王妃、白薔薇王・一郎の妻/政子、赤薔薇王の妃/皇太后白薔薇の長の妃・三兄弟の母)
 石田幸雄(久秀、悪三郎の腹心)
 大森博史(左大臣、一郎の忠臣)
 今井朋彦(善次郎、白薔薇一家の次男/右大臣、白薔薇の家臣・理智門の義父/理智門)
 山野史人(一郎、白薔薇王/市長)
 月崎晴夫(太郎冠者、悪三郎の従者)
 じゅんじゅん(影法師)
 小美濃利明
 坂根泰士
 すがぽん
 平原テツ
 時田光洋
 土山紘史
 盛隆二
 大城ケイ
 大竹えり
 荻原もみぢ
 黒川深雪
 福留律子
収録: 2007年7月 東京 世田谷パブリックシアター
番組: NHKミッドナイトステージ館 舞台「国盗人」
チャンネル: BS2
放送日: 2010年1月8日(金)
放送時間: 翌日午前0:50~翌日午前3:52(182分)
ジャンル: インタビュー+古典劇(劇場公演)

国盗人








W・シェークスピア原作の「リチャード三世」をもとに
野村萬斎が舞台を日本の戦乱期に置き換え、狂言の手法で描く。

悪三郎に扮する萬斎は圧巻。
狂言の口跡・所作に裏打ちされた身体的なキャラクター作り。
洗練された狂言的な舞台装置だけに
泥臭い扮装を避けたのかもしれないが
瘤を背負ったせむし男という設定にこだわって
もっと具体化しても良かったのではと感じる。

悪三郎に翻弄される王族女性4役を演じる
白石の存在感は改めて取り上げる必要もないが
1人で演じるそれぞれの役が違って見えるからすごい。
キャスティングされているのだから演じるのは当たり前だが
これがどうしてなかなか至難なのだ。

キャラクター芝居で、一郎と市長を演じる山野はまだいいが
3役を演じる今井にいたっては何をやっても同じ。
彼に関しては、この作品に限らずどの舞台についても言える。
面が悪いのはどうしようもないとしても、
台詞回しは器用なのだから、
演技分けする技量はあるように思うのだが。

役者の台詞も舞台の転換も非常にテンポよく
ストーリーが分かりやすい仕上がりになっているが
悪三郎も含め、人間の業が感じられない。
もっと、おどろおどろしい人心の闇を見たい。
"つわものどもが夢のあと" を活かすためにも。

ただ、狂言と新劇の融合という意味では
見事な結果を出した萬斎の勝利と言えよう。

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『思い出を売る男』 [舞台]

「思い出を売る男」(再)(2008)★★☆☆50点
※(再):私が以前に観たことのある作品
作: 加藤道夫
演出: 浅利慶太
装置: 林光
出演:
 田邊真也(思い出を売る男)
 味方隆司(広告屋)
 金田俊秀(GIの青年)
 日下武史(乞食)
 芝清道(黒マスクのジョオ)
 関根麻帆(花売娘)
 野村玲子(街の女)
 西珠美(恋人ジェニイ)
 神保幸由
 有賀光一
 福島武臣
 塩地仁
 斉藤美絵子
収録: 2008年7月 東京 自由劇場
番組: NHK芸術劇場 劇場中継「思い出を売る男」
チャンネル: 教育/デジタル教育1
放送日: 2010年1月8日(金)
放送時間: 午後11:47~翌日午前1:00(73分)
ジャンル: 現代劇・新劇

劇団四季 思い出を売る男 [DVD]








5年程前に、石丸幹二(男)、下村尊則(広告屋)のキャストで
劇場で鑑賞したこともある。
2人ともその後間もなく退団してしまったが…

戦後の街角を舞台にした幻想的・詩情的作品。
オルゴールとサクソフォン。
戦後を直接体験していない私でも、郷愁を感じる設定である。

近年、アルツハイマーはじめ、痴呆症がクローズアップされ
映画などのテーマにもなる。

まだ思い出のない無邪気な花売り娘。
世間をたくましく生きる広告屋。

そして、暗い過去をひきずるパンパン。
男は彼女に、
"思い出だけが君を支える唯一の生き甲斐だ" と語るが
過去に依存して生きることには共感できない。
思い出を、現実からの逃避する材料にしてはいけない。

記憶がいかに人間に大切なものかは分かる。
自分にとっても記憶は大切だが
私が生きている理由の一つは
人の記憶に残ることである。
生きているときも勿論だが、
自分の死後も生きる人たちに思い出してもらえたら至福だ。

大人に向けたおとぎ話的な作品だが
将来を語るエンディングにしなければ
ただのセンチな自己憐憫に帰結してしまう。

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『ひかりごけ』 [舞台]

「ひかりごけ」(2009)★★☆☆☆40点
作: 武田泰淳
演出: 浅利慶太
装置: 金森馨
出演:
 日下武史(船長)
 中村匠(西川)
 神保幸由(八蔵)
 髙橋征郎(五助)
収録: 2009年4月 東京 自由劇場
番組: NHK芸術劇場 劇場中継「ひかりごけ」
チャンネル: 教育/デジタル教育1
放送日: 2010年1月8日(金)
放送時間: 午後10:33~午後11:45(72分)
ジャンル: 現代劇・新劇

劇団四季 ひかりごけ [DVD]








熊井啓監督で映画化もされている武田泰淳作の「ひかりごけ」。
戦時下、難破した軍船の乗組員4人に
"生" の問題を突きつける劇団四季初の創作劇である。

側面に小さな円窓が取り付けられた幾何学的な白い密室。
遠近感をつけた基盤目状の舞台装置である。

極限状態を箱で表現し、前衛的と話題となったらしいが
舞台となる昭和19年という時期と
不条理的劇を思わせる妙に整然と綺麗な装置とのアンバランスが
冒頭から気になって仕方がない。

飢えと寒さの中で問われるのは
仲間の人肉を食べて生き延びるか否か。

生きるとは何か。
人間とはいかなる存在なのか。
十戒にもある "殺すなかれ" の根拠を問うテーマであり
反捕鯨団体はじめ、愛護団体の信条にも通じる問題だ。

戦時中には、人肉を食らって生き延びたという話は
表沙汰になっていないだけで実際には山ほどある。
近年では、「アンデスの奇跡」として映画化された
1972年のウルグアイのラグビーチームの話もある。

自分は人を食らうだろうか?
想像してみるが、結論は出ない。
親兄弟、友人、知人、見知らぬ人。
どれをとっても、
生きるために食べる気もすれば、やはり食べられない気もする。

この作品を観はじめてすぐに思い出した戯曲がある。
バリー・コリンズ作の「審判」。
ドイツ軍捕虜となったソ連兵を題材にした作品。
同じく、人肉を食って一人生き残った主人公による一人芝居である。
舞台は法廷、証言台に立って2時間半の独白劇。

私はまだ劇団の研究生時代、加藤健一によるこの劇を観た。
超満員で、最前列中央に座布団を敷いて加藤を見上げながら
気を抜く間もなく最後まで観つづけていたのを覚えている。

"我慢" という言葉だけで、
観客に対し曖昧にテーマを丸投げした本作との決定的な違いは
言葉を使ってきちんと自分の思いを説明している点である。
結論を求める芝居ではないが
ただ提示するだけなら、わざわざ舞台にすることもなかろう。

ここのところ加藤による再演はないが
彼はこの作品をライフワークにすると語っていたはず。
興味のある方は
いずれ機会があれば観劇するなり、市販の戯曲を繰るなり。
ちなみに、ピーター・オトゥールは
膨大な台詞量にめげて本作品を降板している。

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