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『ひかりごけ』 [舞台]

「ひかりごけ」(2009)★★☆☆☆40点
作: 武田泰淳
演出: 浅利慶太
装置: 金森馨
出演:
 日下武史(船長)
 中村匠(西川)
 神保幸由(八蔵)
 髙橋征郎(五助)
収録: 2009年4月 東京 自由劇場
番組: NHK芸術劇場 劇場中継「ひかりごけ」
チャンネル: 教育/デジタル教育1
放送日: 2010年1月8日(金)
放送時間: 午後10:33~午後11:45(72分)
ジャンル: 現代劇・新劇

劇団四季 ひかりごけ [DVD]








熊井啓監督で映画化もされている武田泰淳作の「ひかりごけ」。
戦時下、難破した軍船の乗組員4人に
"生" の問題を突きつける劇団四季初の創作劇である。

側面に小さな円窓が取り付けられた幾何学的な白い密室。
遠近感をつけた基盤目状の舞台装置である。

極限状態を箱で表現し、前衛的と話題となったらしいが
舞台となる昭和19年という時期と
不条理的劇を思わせる妙に整然と綺麗な装置とのアンバランスが
冒頭から気になって仕方がない。

飢えと寒さの中で問われるのは
仲間の人肉を食べて生き延びるか否か。

生きるとは何か。
人間とはいかなる存在なのか。
十戒にもある "殺すなかれ" の根拠を問うテーマであり
反捕鯨団体はじめ、愛護団体の信条にも通じる問題だ。

戦時中には、人肉を食らって生き延びたという話は
表沙汰になっていないだけで実際には山ほどある。
近年では、「アンデスの奇跡」として映画化された
1972年のウルグアイのラグビーチームの話もある。

自分は人を食らうだろうか?
想像してみるが、結論は出ない。
親兄弟、友人、知人、見知らぬ人。
どれをとっても、
生きるために食べる気もすれば、やはり食べられない気もする。

この作品を観はじめてすぐに思い出した戯曲がある。
バリー・コリンズ作の「審判」。
ドイツ軍捕虜となったソ連兵を題材にした作品。
同じく、人肉を食って一人生き残った主人公による一人芝居である。
舞台は法廷、証言台に立って2時間半の独白劇。

私はまだ劇団の研究生時代、加藤健一によるこの劇を観た。
超満員で、最前列中央に座布団を敷いて加藤を見上げながら
気を抜く間もなく最後まで観つづけていたのを覚えている。

"我慢" という言葉だけで、
観客に対し曖昧にテーマを丸投げした本作との決定的な違いは
言葉を使ってきちんと自分の思いを説明している点である。
結論を求める芝居ではないが
ただ提示するだけなら、わざわざ舞台にすることもなかろう。

ここのところ加藤による再演はないが
彼はこの作品をライフワークにすると語っていたはず。
興味のある方は
いずれ機会があれば観劇するなり、市販の戯曲を繰るなり。
ちなみに、ピーター・オトゥールは
膨大な台詞量にめげて本作品を降板している。

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