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『悪人』 [邦画(ア行)]

「悪人」(2010)★★★☆70点
英語題: Villain
監督・脚本: 李相日
製作: 島谷能成、服部洋、町田智子、北川直樹、宮路敬久、堀義貴、畠中達郎、喜多埜裕明、大宮敏靖、宇留間和基
プロデューサー: 仁平知世、川村元気
エグゼクティブプロデューサー: 市川南、塚田泰浩
ラインプロデューサー: 鈴木嘉弘
原作・脚本: 吉田修一
撮影: 笠松則通
美術: 杉本亮
美術監督: 種田陽平
編集: 今井剛
音楽: 久石譲
音楽プロデューサー: 岩瀬政雄、杉田寿宏
主題歌: 福原美穂『YourStory』
衣裳デザイン: 小川久美子
照明: 岩下和裕
装飾: 田口貴久
録音: 白取貢
出演:
 妻夫木聡(清水祐一)
 深津絵里(馬込光代)
 樹木希林(清水房江)
 柄本明(石橋佳男)
 岡田将生(増尾圭吾)
 満島ひかり(石橋佳乃)
 塩見三省(佐野刑事)
 宮崎美子(石橋里子)
 光石研(矢島憲夫)
 余貴美子(清水依子)
 井川比佐志(清水勝治)
 松尾スズキ(堤下)
 池内万作(久保刑事)
 山田キヌヲ(馬込珠代)
 韓英恵(谷元沙里)
 中村絢香(安達眞子)
 永山絢斗(鶴田公紀)
製作・配給・ジャンル: 「悪人」製作委員会(=東宝、電通、朝日新聞社、ソニー・ミュージックエンタテインメント、日本出版販売、ホリプロ、アミューズ、Yahoo!JAPAN、TSUTAYAグループ、朝日新聞出版)/東宝/ミステリー・ドラマ/139分

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ふとしたことから殺人者となった青年と、愛に飢えた女が
互いの孤独の中で出会い、ついには逃避行に至る物語。
事件の被害者と加害者、
双方の人間模様を織り交ぜながら進行する。

葬式で、柄本扮する佳男が
佐野刑事に突っかかったなりで、突然懇願に転じる場面。
不自然極まりなく、役者の演技プランが見えてしまう。
柄本明という俳優、常にそれが見え隠れするのが玉に瑕だ。
引き出し(アイデア)を沢山持っていることは役者の強みだが
負け戦になるようなアイデアは、アイデアとは言えない。
すでに、特徴的な顔立ちと独特の台詞のリズムだけで
唯一無二の貴重な存在なのだから、
小手先のつまらぬ小細工で自らの演技をぶち壊さないでほしい。

妻夫木には、"頑張ったで賞" を授けよう。
逃避行の最中、海辺の和食屋で昼飯を食べるシーン、
泣きながらの吐露はいただけない。

本作のキャスティングは結構いい。
悪徳商法で漢方薬を売りつける松尾スズキ、
薄っぺらな大学生・岡田将生。
この2人は特によかった。
逆に、主演の二人は
妻夫木や深津でなくて全然構わない。

演技評価の固い深津に関して不満を少々。
濡れ場で、完全にバスト[乳首]をガードしているのが明白で、
演技でなく、隠すための演出やカメラワークの方に
(特に、男性の)観客の意識が逸れることは想像に難くない。
裸を見せろ、とは言わないが
見せたくないことがバレる程度の露出しかできないのなら
端から、この役を受けるべきではない。
自首しようとする祐一の姿を追いながら、
離れてしまうことに耐え切れず
たまらずにクラクションを鳴らして引き止める光代。
その直後の、情動的とも言えるセックスシーンで
そんなガードぶりが見えるようでは、
せっかく差し込んだ激しいセックスシーンの意味が水泡に帰す。

この映画で一番印象的だったのは
佳乃の父・佳男が、増尾にスパナを振り上げる場面だ。
"そうやってずっと生きていけ" と怒号を放つ激情はあれど、
手にしたスパナを "衝動に任せて打ち下ろしたりはしない"
という佳男の選択にホッとし、そして共感した。

物語の中、
樹木希林が演じる祐一の祖母・房江と
佳乃の両親が一番可哀想だ。

"悪人" とは
決して妻夫木演じる祐一のことだけを言っているのではない。
警察が押し寄せるのを感じながら、光代の首に手をかける祐一。
自分が連れ回したことを正当化し、
光代に罪を負わせないがための優しさ。
だから、祐一は悪人ではないとも言える。

増尾や佳乃はもちろんのこと、
光代の妹も、マスコミも
みな身勝手だ。
"悪人" はその身勝手さを投影した言葉だろう。
だが、身勝手なのが人間だと思う。
誰でも、徒に人を傷つけてしまうことはままある。
だから、それを一概に悪いと断罪することなど私にはできない。
人の命を奪うことも、罪ではあるだろうが
果たして、それが常に悪なのかどうか。

光代の首を絞める祐一が引き剥がされ連行されるのは当然だが
と同時に、警察は
光代の安全を確認し病院に搬送すべく、
光代の元に駆け寄るのが筋ではないのか。
塩見演じる刑事の視線は、連れて行かれる祐一から光代に移るが
彼女に手を差し伸べるわけではない。
放心の光代を真上から印象的に撮りたかったのだろうが、
ならば、たとえありがちなショットになっても
担架なりに載せられて運ばれる光代を真上から狙えばいい。
クライマックスで、
こういった演出先行の非リアリズムには幻滅する。

ラストショットの妻夫木の顔だが
朝日を浴びて明るく輝いている中で
眉の黒さ、唇の赤さが妙に目立っていて、
彼が腹話術の人形に見えて仕方なかった…

この映画は佳作と言えるが、
この程度の映画が
日本アカデミー賞の主要部門をかっさらってしまうなんて、
やはり日本アカデミー賞がろくでもないのか
邦画なんて、所詮そんなレベルなのか。
いずれにしても、お寒い話である。
 
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