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『ベン・ハー』 [洋画(ハ行)]

「ベン・ハー」(1959)(再)★★★★85点
原題: BEN-HUR
監督: ウィリアム・ワイラー
製作: サム・ジンバリスト
原作: ルー・ウォーレス
脚本: カール・タンバーグ
撮影: ロバート・L・サーティース
音楽: ミクロス・ローザ
助監督: セルジオ・レオーネ
出演:
 チャールトン・ヘストン(ユダ=ベン・ハー、ユダヤ王族)
 ジャック・ホーキンス(クインタス・アリウス、執政官)
 スティーヴン・ボイド(メッサーラ、エルサレムの司令官)
 ヒュー・グリフィス(イルデリム、族長)
 ハイヤ・ハラリート(エステル、シモニデスの娘)
 サム・ジャッフェ(シモニデス、ユダの使用人)
 マーサ・スコット(ミリアム、ユダの母)
 キャシー・オドネル(ティルザ、ユダの妹)
 フィンレイ・カリー(バルサザー、イルデリムの食客)
 フランク・スリング(ポンティウス・ピラトゥス、ユダヤ州総督)
 テレンス・ロングドン(ドルーサス、メッサーラの副官)
 アンドレ・モレル(セクスタス)
 マリナ・ベルティ(フレビア)
 ジュリアーノ・ジェンマ(ローマ人将校)
受賞:
 アカデミー賞
  ■作品賞
  ■主演男優賞 チャールトン・ヘストン
  ■助演男優賞 ヒュー・グリフィス
  ■監督賞 ウィリアム・ワイラー
  ■撮影賞(カラー) ロバート・L・サーティース
  ■劇・喜劇映画音楽賞 ミクロス・ローザ
  ■美術監督・装置賞(カラー) William A. Horning(美術)、Edward C. Carfagno(美術)、Hugh Hunt(装置)
  ■衣装デザイン賞(カラー) ElizabethHaffenden
  ■特殊効果賞 A. Arnold Gillespie(視覚)、Milo Lory(聴覚)、Robert MacDonald(視覚)
  ■音響賞 Franklin E. Milton、Metro-Goldwyn-Mayer Studio Sound Department
  ■編集賞 Ralph E. Winters、John D. Dunning
 NY批評家協会賞
  ■作品賞
 ゴールデン・グローブ賞
  ■作品賞(ドラマ)
  ■助演男優賞 スティーヴン・ボイド
  ■監督賞 ウィリアム・ワイラー
  ■特別賞 アンドリュー・マートン(戦車競技シーンの演出に対し)
 英国アカデミー賞
  ■作品賞(総合)
 アメリカ国立フィルム登録簿
  ■新規登録作品(2004年)
製作・ジャンル: MGM(米国)/ドラマ・史劇/212分

ベン・ハー 特別版 [DVD]








外国語映画賞や短編アニメ賞など、
明らかに対象とならない部門を除く17部門中
11部門でオスカーを受賞した歴史大作。

印象的なガレー船での労役や戦車競走に象徴される、
ベン・ハーの数奇な運命と復讐劇として
この映画を捉える人が多いことと思う。
しかし、"A Tale of the Christ" と副題が示すごとく
これは本来、キリストの物語として書かれたもの。
私自身、過去にこの映画を5, 6回は観ていると思うが
これまで、この副題に気づかなかった。

絶大なるローマの帝国主義と、
被征服者たるユダヤ民族の自由を求める信仰。
この対立が、幼なじみの2人を
生死を賭けた壮絶な争いに追いやるのである。

冒頭に挙げたように、ガレー船のシーンはあまりに有名。
打ち鳴らされる木槌の拍子に合わせ、魯を漕ぐ姿は、
その痛々しい境遇から、ベン・ハーに対する同情を誘う。

映画冒頭で
同胞を裏切れ、とメッサーラに請われるベン・ハーの
ファーストネームが "ユダ" とは
イエスを裏切る使徒こそ "イスカリオテのユダ" であることを考えるに
随分皮肉な設定である。
バルサザーからの、イエスの説話を聞きに行こうという誘いを断り、
それでも、磔に向かうイエスの後に付き従うベン・ハーの姿からも
作家が意識的に "ユダ" の名を冠したのであろうと想像できる。

その一方で、キリストを重ねているようなシーンもある。
本作ではその描写はなかったように思うが、
新総督ピラトゥスは、イエスを磔刑に処す際
ユダヤの王を揶揄し "茨の冠" を被せた、と聖書に記されている。
メッサーラを破り、戦車競走大会に優勝したベン・ハーは
このピラトゥスから "神" に贈るとの祝辞とともに "月桂冠" を授かる。
この場面ではつい、ユダ(=ベン・ハー)はイエスの鏡かとも考えた。

クレジットからJ・ジェンマが出演していることが伺えるのは
非常に興味深い。
メッサーラ傘下のローマ人将校の役らしいが
顔を見ても、はっきりとは見極められなかった。
登場するのは映画の前半、
脱獄したベン・ハーがメッサーラの部屋に押し入るシーンで、
セリフ無しでメッサラの横で身構えている副官がそれである。

今回久しぶりの鑑賞に当たり、字幕に新発見。
ベン・ハーの母・妹がかかる不治の病が "業病" と訳されていた。
私には、"らい病" と字幕が出ていた記憶しかない。
知らなかったのだが、
現在、この言葉は
差別用語だとして、使われることはほとんどないらしい。
私は今日の今日まで、
"らい病" に差別的ニュアンスがあるのを知らずに過ごしてきた。
ついでに言えば、
作品中に描写されているように
当時、万人がこの病を患った人間を差別していたのだから、
観客に、映画の時代背景を知らしめるためにも
差別的な含みのある言葉を用いた方が適当だとさえ感じる。
時代が時代だから
ハンセン氏病などと現代の訳語は与えられないだろうが、
私は "業病" なる単語も知らなかったため、改めて調べた。
そこで、知る必要のない差別意識の存在に遭遇するのである。
差別用語、と言われる言葉についていつも思うが、
使用しないよう啓蒙することで、却って
差別意識のない人間に、差別意識を植え付けることも多いのでは?
どんな言葉を使おうが、
意識があれば、言い方次第で差別になるのだから。

すっかり脱線してしまったが
本作は、何度観ても飽きない。
キリスト教の世界観に触れる入口としても、格好の素材だろう。
観たことのない人は、
3時間半超という長さにめげずに、是非観てほしい。

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