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『伊賀の水月』 [邦画(ア行)]

「伊賀の水月」(1942)★★☆☆50点
監督・脚本: 渡辺邦男
企画: 税田武生
製作: 酒井箴
撮影: 渡辺孝
美術: 上里義三
音楽: 山田栄一
録音: 大谷巌
照明: 伊藤貞一
出演:
 長谷川一夫(荒木又右衛門)
 市川雷蔵(本多大内記)
 林成年(武右衛門、若党)
 島田竜三(池田忠雄)
 近藤美恵子(みね、靱負の娘)
 鶴見丈二(渡辺数馬、靱負の息子)
 田崎潤(河合又五郎)
 黒川弥太郎(柳生又十郎但馬守)
 阿井美千子(おりゅう)
 中村玉緒(みち)
 浦路洋子(ゆき、数馬の許婚)
 河津清三郎(阿部四郎五郎、旗本六方組首領)
 水原浩一(孫右衛門、若党)
 千葉敏郎(星合段四郎)
 小堀明男(近藤登之助)
 杉山昌三九(我孫子、旗本)
 小川虎之助(渡辺靱負、池田藩士)
 原聖四郎(笹川、柳生家老)
 見明凡太朗(河合甚左衛門、又五郎の伯父)
 二代目中村鴈治郎(大久保彦左衛門)
 荒木忍(荒尾豊後)
 羅門光三郎(旗本一党)
 寺島貢(兼松、旗本)
 本郷秀雄(仙太、町人)
 伊達三郎(久世、旗本)
 葛木香一(池田志摩)
 香川良介
製作・配給・ジャンル: 大映/大映/時代劇/102分

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鍵屋の辻の決闘、あるいは伊賀越の仇討ち
として知られる史実に有名な仇討ち事件を描く。

実際に又五郎に殺害されたのは数馬の父でなく、
弟・源太夫であることをはじめ、史実と異なる点も多い。

大映映画では、旗本の横暴がしばしば描かれるが、
大名と旗本の確執、というよりも旗本の大名に対する対抗意識は
史実的にも、かほど強く執念深いものだったのだろうか。

卑劣漢・又五郎には、すでに悪役の定着していた田崎潤。
"盗む" という言葉に激昂して、渡辺靱負を斬るのだが
理由のつまらなさもさることながら
"盗む" にひっかかるタイミングが全くおかしい。
刀の持ち出しを見つかり、
第一声で "盗みだすとは…" と糾弾されているのに
何度か同じ言葉を浴びせられた末に、
初めて聞いたかのように、急に凄みだす。
仇討ちの原因となるシーンなのだから、
脚本をもっと推敲すべきだったろう。

郡山の地で友好を深めた荒木と甚左衛門。
甚左衛門が又五郎の親類であるがゆえに、
敵味方に分かれ、友情も不本意に引き裂かれる。
周りに不幸しか招かない又五郎は、つくづく身勝手な男である。

大内記・本多は、
荒木を "召抱える、暇を出す" にしか関わってこないので
雷蔵の出番はかなり少ない。
どの作品を見ても思うが、彼は実に殿様姿の似合う俳優である。

大久保老人の立ち位置が分からない。
悪行三昧の六方組の後ろ盾かと思いきや、
又五郎の一件で、一転六方組を戒める側に。
大久保がその横暴を許したがゆえに、
かくも理不尽な騒動を招いたというのに。

文武に秀で、忠信篤く、義理人情も備えた荒木。
完全無欠というのは、十分すぎるヒーローの要件だが
長谷川一夫が演じる役どころは
常に出来すぎで、観すぎると詰まらなくなる。

肝心の仇討ちシーンは、長谷川もさして見せ場なく
36人斬りも雑魚ばかり斬っている感じで盛り上がらない。
先に挙げた甚左衛門との対決は、対決と呼べるような代物ではなく
本当に剣を交えたかどうかも分からぬほど、一瞬のカット。
36人斬りで魅せられないなら、
せめて、この2人の鍔迫り合いを見せてほしかった。

何とも頼りない数馬が、どうにか本懐を遂げるラスト。
傷を負った武右衛門が命を取り留めたのか否かが気になった。

殺陣よりドラマに重きがある "仇討ち" 物。
それにしては、もう一つ同情を引かないのは
仇討ちより、荒木又右衛門の武勇伝に仕立てているからだろう。
 
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