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『大魔神』 [邦画(タ行)]

「大魔神」(1966)★★★★☆☆80点
英語題: MAJIN. MONSTER OF TERROR
監督: 安田公義
製作: 永田雅一
企画: 奥田久司
脚本: 吉田哲郎
撮影: 森田富士郎
美術: 内藤昭
造型: 高山良策
音楽: 伊福部昭
音響効果: 倉嶋暢
特技監督: 黒田義之
擬闘: 楠本栄一
出演:
 高田美和(花房小笹)
 青山良彦(花房忠文)
 藤巻潤(猿丸小源太)
 五味龍太郎(大館左馬之助)
 遠藤辰雄(犬上軍十郎)
 月宮於登女(信夫、巫女)
 出口静宏(竹坊)
 島田竜三(花房忠清)
 伊達三郎(中馬逸平)
 二宮秀樹("少年" 花房忠文)
 香山恵子(悠乃)
 尾上栄五郎(吾作)
 橋本力(魔神/元木半蔵)
 黒木英男(原田孫十郎)
 杉山昌三九(梶浦有助)
 伴勇太郎(小郡主水)
 木村玄(茂助)
製作・配給・ジャンル: 大映/大映/時代劇・特撮/84分

大魔神  デジタル・リマスター版 [DVD]








戦国乱世に起きた謀反に端を発する時代活劇。

黒雲・雷鳴とともに
"大魔神" の題字が大写しになって映画は始まる。
鮮やかな炎を前面バックに、クレジットが映し出されるが
その文字もまた、おどろおどろしさを強調するような字体である。
重厚な音楽の終わり間際、
画面中央に生々しい魔神の目だけが現われ
否が応でも、映画への期待感が高まるのである。

私には
大川橋蔵版「銭形平次」の三ノ輪の万七役で
馴染み深い遠藤辰雄。
先頭に立って逆臣・左馬之助の為に働く
腹心・軍十郎を演ずる。

下克上なった左馬之助は
新たな砦を建造せんが為、領民に過酷な労役を課す。

魔神像を破壊せんと試みた軍十郎ら。
像の額に鉄杭を打ち込んだ途端に
額からは血が流れ、嵐と地震が巻き起こり
軍十郎は亀裂に飲み込まれて最期を遂げる。

竹坊が魔神の山に迷い込むシーンでは、
人骨の腕に見えたものは実は枝であるというカモフラージュや
お化けらしき物の透明に透ける像、
木々を大きく見せ威圧感を感じさせる下からショットなど、
特撮を含めた撮影テクニックによって
臨場感たっぷりに恐怖を煽る。

小笹が魔神に祈りを聞き届けてもらうために
滝に身を投じようとした瞬間、
魔神像が動き出し、魔神がその顔を現わす。

麓では、仲間の決起も実らず、忠文が槍に突かれんばかり
青白い光の玉となって、魔神が登場する。
恐ろしく厳つい顔だが、カッコイイ。
忠文が磔となっている十字を抜いてやるのだが
その乱暴な抜き方の、人間らしくないところが
魔神の "魔" たる所以で心地よくさえ感じる。

飛んでくる弓矢や大石を物ともせず、
業火でさえ、両腕の一振りで消してしまう。

身長4.5mという設定の割に、
時折アップになるその手が小さいのが気になった。

自らの額に打ち込まれた杭を引き抜き
その杭で、掴み上げた左馬之助を
十字に見える建物の残骸に磔にするシーン。
何とも秀逸なアイディアと言わざるを得ない。

怒りに狂った魔神は
左馬之助一派を片付けた後、罪のない領民をも襲う。
止めようとする忠文や竹坊。
踏みつけられそうになる竹坊を身を挺して守ろうとする小笹。
小笹を前に、魔神の足は止まるのだが、
ここで見逃したくないのは、魔神がまばたきするのである。
青銅の顔面で、目だけが唯一動く存在。
その目は、登場から鋭く見開かれたままなのだが
このショットで、一度だけまばたきしてしまう。
してしまう、と言うのは
魔神を演じた橋本は、監督から
"魔神は神だからまばたきしないでくれ"
と、注文されていたという話を聞いたことがあるからである。
マニアにはたまらない映像であろう。

光の玉とともに飛び去った魔神。
その場に残った、魂の器である像が
泥土のように崩れ去るラストの演出にも感心する。

魔神にリアリティを持たせた特撮が素晴らしいのは勿論だが
随所に見てとれる撮影の工夫、巧みな演出を含め、
日本映画史に残る秀作と言えよう。
 
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