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『ジョゼと虎と魚たち』 [邦画(サ行)]

「ジョゼと虎と魚たち」(2003)★★★☆70点
監督: 犬童一心
プロデューサー: 久保田修、小川真司
共同プロデューサー: 井上文雄
原作: 田辺聖子
脚本: 渡辺あや
撮影: 蔦井孝洋
美術: 斎藤岩男
音楽: くるり
音楽プロデューサー: 高橋太郎、安井輝
照明: 疋田ヨシタケ
録音: 志満順一
出演:
 妻夫木聡(恒夫)
 池脇千鶴("ジョゼ" くみ子)
 新井浩文(幸治)
 上野樹里(香苗)
 江口徳子(ノリコ)
 新屋英子(ジョゼの祖母)
 藤沢大悟(隆司)
 陰山泰(雀荘マスター)
 真理アンヌ(雀荘の女性客)
 SABU(雀荘の男性客)
 大倉孝二(雀荘の男性客)
 荒川良々(本屋の店員)
 中村靖日(雀荘の男性客)
 西田シャトナー(雀荘の男性客)
 山本浩之(雀荘の男性客)
 板尾創路(現場主任)
 森下能幸(近所の中年男性)
 佐藤佐吉(先輩社員)
受賞:
 第2回ロシア・ウラジオストック映画祭
  ■最優秀主演男優賞
製作・配給・ジャンル: ジョゼと虎と魚たち・フィルムパートナーズ/アスミック・エース エンタテインメント/ロマンス・ドラマ/116分
 
ジョゼと虎と魚たち [DVD]








雀荘でバイトする大学生と
脚の不自由な少女とのロマンスを描いた作品。

大阪の下町が舞台のようだが
主役の妻夫木が標準語で話すから
生活感のある地域色は出ていない。
池脇や板尾のしゃべり口がとても自然に感じられる一方で
やはり、大倉孝二のような東京もんの大阪弁はいただけない。

押入れを寝室代わりに
祖母がゴミ捨て場から拾ってきた書物を読みあさるジョゼ。
祖母に守られながらも
強く生きてきた彼女の独特なキャラクターは
恒夫ならずとも惹かれるものがある。
立派に魅力ある人物に作り上げた池脇を
高く評価したい。

写真を撮ってくれるサーファーが
"ハイ、チーズ" 代わりに言う、
"鳩が出るよ" って何が面白いんだ?
写真に収まる、不細工な恒夫とムスッとしたジョゼがいい。

ラブホテルで、
"自分は深い深い海の底にいた" と語るジョゼ。
"寂しかったろう" と思いやる恒夫に対して
"別に寂しくはない、初めから何もないから"
とジョゼは答える。
"そこから、今恒夫と一緒にいる場所まで泳いできた" と。
さらに
"あんたに捨てられコロコロと坂を転げ落ちたとしても
それもよしだ" とも。
幸せな中にありながらも
達観した人生観の揺るがぬ彼女に、芯の強さを感じる。

結局、最後に逃げてしまう恒夫。
障害者の女性を愛するとは
一体どういうことなんだろう?という
映画の冒頭から頭を離れなかった問い。
健常者同士の恋愛・結婚でさえ
お互いを支えきれなくなって終末を迎えるのに
障害者の物理的負担を抱えて愛を貫くには
相当な覚悟と忍耐が必要だ。
物理的な負担も
いずれ、精神的な負担に姿を変えるのだから。
映画も終盤を迎えて、改めて考えてしまった。

逃げておきながら、
ジョゼを想い、思わず泣き崩れる恒夫。
彼の胸にこみ上げる切なさには
罪悪感、郷愁、憐憫、自身に対する義憤など
複雑な思いが詰まっている。
そんな恒夫の痛みに共感しながらも
人間はいずれ、そんなことさえ忘れてしまうのだ、
と冷めた見方もしてしまった。
妻夫木も好演だとは思うが、
これまで何を演じても同じという側面を考えれば
数々の賞を受賞するほどの名演には程遠い。

何年かぶりで、2度目の鑑賞。
最初に観た時ほど
瑞々しさは感じられなかったのは致し方ないこと。
それでも
心をやんわりかき乱される心地よさは変わらなかった。

暗いイメージが先行して嫌いだった池脇千鶴を
なかなかステキな女優として見直した作品である。
逆に、
恒夫の恋人役・上野樹里の下手さ加減が浮き立つ。
内向的で魅力のない女子大生という役どころから言えば
彼女にピッタリで、
キャスティングした製作サイドのファインプレーだ。

ジョゼの椅子からがさつにドタッと下りるショットで終幕。
同じシークエンスを
作品前半で何度か登場させ、
さらには、恒夫にも突っ込みを入れさせていたのは
こういう具合に象徴的なラストにしたかったからか、
と合点する。
良作だけに、
月並みな作意が最後に味噌をつけた形でガッカリ。

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