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『宇宙人東京に現わる』 [邦画(ア行)]

「宇宙人東京に現わる」(1956)★★★★☆75点
監督: 島耕二
製作: 永田雅一
企画: 中代富士男
原案: 中島源太郎
脚本: 小国英雄
撮影: 渡辺公夫
録音:西井憲一
照明: 久保田行一
美術: 間野重雄
衣裳: 東郷嗣男
音楽: 大森盛太郎
音響効果: 花岡勝次郎
色彩指導: 岡本太郎
特殊技術: 的場徹
編集: 鈴木東陽
出演:
 川崎敬三(磯辺徹、城北天文台研究員)
 山形勲(松田英輔)
 見明凡太朗(小村芳雄、城北天文台研究員)
 南部彰三(磯辺直太郎、徹の父・警察官僚)
 目黒幸子(磯辺徳子、直太郎の妻)
 フランク熊谷(城北天文台通信係)
 河原侃二(高島博士)
 岡村文子(お花)
 永井エミ子(小村多恵子、芳雄の娘)
 小原利之(天野健一)
 平井岐代子(松田清子)
 斎藤紫香(紳士を振った男)
 刈田とよみ(青空ひかり/天野銀子・パイラ人)
 八木沢敏(パイラ人第2号)
 夏木章(パイラ人第3号)
 津田駿二(パイラ人第4号)
 渡辺鉄弥(三吉)
 泉静治(酔客)
 谷謙一(用心棒)
 杉田康(新聞記者)
 花村泰子(芸者)
 原田該(船員)
製作・配給・ジャンル: 大映/大映/特撮・SF/87分

宇宙人東京に現わる [DVD]








日本初の本格的カラー空想特撮映画。
特撮は、円谷プロのウルトラ・シリーズを手掛けた的場徹。

侵略性・攻撃性のない円盤、
そして、宇宙道徳なるものを唱える友好的な宇宙人。
対立・戦争が既定ともなる現代の宇宙物の映画に慣れている私には
予想しなかった宇宙人の性格設定であり、
支脈となるそれぞれのドラマの切り口も意外性・多様性に富んでいて
大いに新鮮味を感じた。

"学者が政治家みたいに平気で放言したらエラいことになるわよ"
とは居酒屋・宇宙軒の女将の発言。
庶民の口から、いきなり辛辣な言葉が飛び出す。

岡本太郎がデザインしたと言われるパイラ星人は
星形、あるいはヒトデ型とも言える。
中央の大きな一つ目を人の顔に変えれば
大阪万博のシンボル・太陽の塔の原型とも言える外観をしている。

人間が薄い布を被っているのが丸分かりのパイラ人の衣裳には
やはり稚拙さを感じざるを得ない。
また、地球人に変身する他、潜入法がないと結論づける際には
"地球に入れば地球に従え" という諺が飛び出す。
"郷に入っては郷に従え" のもじりだが、
宇宙人と諺という取り合わせも笑える。

パイラ星人が日本人に変身するシーンも、ごく単純で粗い手法だが
当時の観客にはかなりの衝撃であったことは想像に難くない。

円盤の中では、テレパシーで会話しているパイラ星人が
"地球人の中に入り込むことに成功した" 旨を
指輪型の通信機で交信する時に使うのが、
テレパシーとかパイラ人の言葉でなく、日本語であることは疑問。

指紋のないことを発見し、瞬間移動を目撃。
汗からの微粒子の解析・照合、
超人的なジャンプ力を重力の違いであると分析する。
なかなか細かい部分を詰めた脚本であることが分かり、
それなりの説得力を持つ。

水爆以上の威力を発揮するウリウム元素101。
原水爆の平和的利用と、
ウリウム研究の中止を進言するためにやってきたパイラ星人。
原水爆の保有国は目が覚めにくいから、
真の恐ろしさを知る被爆国日本を選んだと言う。
さらに、たかが日本一国の発言が無力であることも承知だとも。
だが、間もなく地球にアールという星が衝突する事実を告げ
その衝突を避けるために
地球上の全原水爆を放出し、
その星を粉砕あるいは軌道変更する必要性を説く。

一方では
ウリウムの発見者・松田の元には、
武器商人が現れ誘拐・拉致までする。

アール星の大接近を前に
至るところで警報が鳴り、頭巾を被って避難する庶民の姿格好は
空襲警報に逃げ惑う戦時中の日本人さながらである。

原水爆も効かないという新たな問題が発生し
突風・津波・動物の死滅・異常行動、など
アールの接近による天変地異の描写にも枚挙に暇がない。

パイラ人によるウリウム爆弾の投下により
アールが爆発するのをサングラスをして目撃するシーンは、
原爆の成功実験を見届けたロスアラモスの研究員の姿が重なる。

種々の事象が冷戦下の世界情勢を強く揶揄・風刺。
核廃絶を理想とする反核メッセージが強く、説教臭さは否めない。
とはいえ、
想像できるかぎりの科学考証に、
次々に畳み掛ける難題と解決による緊張と緩和。
パイラ星人の行動には最後まで不合理な点があるものの、
半世紀以上前の製作だということを鑑みれば
よく練り込まれた力作と言えよう。

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