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『或る「小倉日記」伝』 [TVドラマ]

「或る「小倉日記」伝」(1993)★★★☆70点
演出・プロデューサー: 堀川とんこう
原作: 松本清張「或る「小倉日記」伝」
脚本: 金子成人
プロデューサー: 大木一史
撮影: 山口泰博
照明: 久保田芳實、加藤久雄、豊泉隆穂
美術プロデューサー: 桜井鉄夫
装置: 三木憲一
出演:
 松坂慶子(村上ふじ)
 筒井道隆(村上耕造)
 国生さゆり(山田てる子、看護婦)
 蟹江敬三(白川慶一郎、病院長)
 大森嘉之(江波)
 佐戸井けん太(栗田、病院付き書生)
 松村達雄(麻生、元福岡日日新聞小倉支局長)
 今福将雄(てる子の叔父)
 西村淳二
 佐古雅誉
 渡辺哲
 平泉成
 不破万作
 遠山俊也
 坂口芳貞(ナレーション)
受賞:
 第31回ギャラクシー賞優秀賞
 1994年日本民間放送連盟賞最優秀賞(テレビドラマ)
 第20回放送文化基金賞演技賞受賞 筒井道隆
 第33回日本テレビ技術賞(撮影部門・照明部門)
 日本映画照明技術者協会最優秀照明賞
 第5回上海テレビ祭テレビドラマ審査委員特別賞
放送局: TBS系列
放送日時: 1993年8月4日(水)21:00-22:54
製作・ジャンル: TBS/ドラマ/本編94分

或る「小倉日記」伝.jpg

芥川賞を受賞した松本清張の短編小説のドラマ化。
森鴎外が軍医として赴任していた小倉での足跡を辿ることに
その生涯を捧げた障害者が主人公。
この松本清張一周忌特別企画をTBSチャンネルにて視聴。

障害者ゆえに侮蔑・憐憫の目で見られ
相手にしてもらえない耕造。
体力的ハンデと世間の冷たい視線に打ちひしがれる彼を支えたのは
文学的探究心と、自分を認めさせてやるという気概だった。

それでも、美人で身なりのきちんとした母の助けがなくては
まともな人間として対応してもらえない。
自分の無力を毎日のように思い知らされる生活が
どれだけ辛いものか、私には計りしれない。

筒井道隆がこの難しい障害者の役を好演。
シリアスな役柄ということもあるが、
今まで彼の演技を観た中で一番いい。
まだ20代前半の筒井である。

質屋に通ったり家作(貸家)を売ったりして
息子の面倒を見る母の苦労も絶えない。
献身的に耕造を支える美人母には松坂慶子。
麗しくも哀れな母子を描くのには打ってつけのキャスティング。

"僕を一人にするのが心配だって言ったけど、心配ないよ。
母さんが死んだら僕も死ぬよ"
言葉の出ない母。
障害者を子どもに持つ親なら、誰もが胸を掻きむしられる台詞だろう。

鴎外をよく知る麻生を演じる故・松村達雄の笑顔が素敵だ。
こんな笑顔が自然に出来る俳優に、いや人間になりたい。

やがて、体力が衰え箸も持てなくなる耕造。
その一方で、
鴎外の弟・森潤三郞によって、鴎外本人の「小倉日記」が発見され
構造の長年にわたる成果も日の目を見る機会を奪われる。
遠のいていく意識の中、
そんな悲報を知ることもなく命を引き取る耕造。
死に際に、彼の記憶に蘇る "伝便{でんびん}屋の鈴の音"。
鴎外を追いつづける耕造の旅はすべて、その鈴の音から始まった。
臨終とともに流れる一筋の涙がとても切ない。

人は生きている証が欲しいのだと改めて思う。
それは人とのふれあいかもしれない。
あるいは
形として残る記録かもしれないし、
残された人たちの心に刻まれる限りある記憶かもしれない。
私の場合は何だろう。
おのおのが求める証に、その生き方が見えてくるのだと思った。

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