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『愛の流刑地』 [邦画(ア行)]

「愛の流刑地」(2007)★★☆☆☆40点
監督・脚本: 鶴橋康夫
企画: 見城徹
製作総指揮: 金澤清美
製作: 富山省吾
プロデューサー: 市川南、大浦俊将、秦祐子
原作: 渡辺淳一「愛の流刑地」
撮影: 村瀬清、鈴木富夫
美術: 部谷京子
照明: 藤原武夫
音楽: 仲西匡、長谷部徹、福島祐子
編集: 山田宏司
主題歌: 平井堅「哀歌(エレジー)」
出演:
 豊川悦司(村尾菊治)
 寺島しのぶ(入江冬香)
 長谷川京子(織部美雪、検事)
 陣内孝則(北岡文弥、村尾の担当弁護士)
 仲村トオル(入江徹、冬香の夫)
 富司純子(木村文江、冬香の母)
 浅田美代子(魚住祥子、冬香の友人)
 津川雅彦(中瀬宏、出版社役員・村尾の友人)
 余貴美子(菊池麻子、バーのママ)
 佐々木蔵之介(稲葉喜重、地検副部長・織部の上司)
 佐藤浩市(脇田俊正、刑事)
 高島礼子(佐和、村尾の元妻)
 貫地谷しほり(村尾高子、村尾の娘)
 三谷昇(マンションの管理人)
 木下ほうか(裁判所廷吏)
 本田博太郎(久世泰西、裁判長)
 阿藤快(検事)
 中村靖日(検察事務官)
 松重豊(関口重和、刑事)
 六平直政(刑事)
 森本レオ
 品川徹
製作・配給・ジャンル: 「愛の流刑地」製作委員会(=東宝、讀賣テレビ、日本テレビ、電通、幻冬舎、東北新社、日本経済新聞社)/東宝/ドラマ・ロマンス・エロティック/125分

愛の流刑地 [DVD]








渡辺淳一小説の映像化。
情事の果てに愛人を殺した作家を主人公に描いた映画。

まぶしい光をさえぎるためにかざす手。
これは村尾と冬香の出会いのキーとなる仕草である。
冒頭、冬香の遺体を脇に
村尾が窓から差し込む光を手をかざす。
まあ、まぶしさに気づくタイミングと手をかざす仕草の下手なこと。
この時点では、冬香の仕草に重なるとは分からなかったのに
鮮明に覚えていたのは、
それだけ下手さ加減が気になったからである。

冬香が手をかざす時もそうだが
"光をさえぎる" ために、かざすはずなのに
2人ともまったくさえぎっていない。
世の中に、あんな不自然な行動をとる人間は一人としていない。
画として、俳優の顔が影になるのが嫌だったから
だとすれば、それは本末転倒な考え。
自分の顔がきれいに映ることを優先して
作品や自分の演技の評価が下がれば、俳優とて不本意のはず。

台詞のないカットは、人の表情や仕草にかかってくるわけだから
そのディーテイルや真実味がいかに重要かは自明である。

初めて2人きりで逢う雨の神社。
いくら何でも、あんなにピーカンでザザ降りのお天気雨はないだろう。
シーン最後のカットで
林が覆う陰に明るい太陽光線が差し込む
コントラストの利いた画が欲しかったのかもしれないが
それなら雨のシーンにしなくてもいい。
2人の情熱を強調するために、雨が必要だというなら
快晴下の日向が目立つ前に、雨を止ませればいいだけの話。
演出のアイデアが貧困だ。

津川雅彦を出してきたのは
"渡辺淳一" 作品出演において、先輩俳優だからであろうか。
冬香の母親役に、寺島の実母・富司純子を起用したり
視聴率稼ぎの手法に毒されたTVドラマまがいで
話題づくり先行の、安直なキャスティングに
登場しただけですっかり引いてしまった。

長谷川京子が演じる織部美雪は
上司・稲葉との間に、
村尾と冬香に重なるようなプライベートを抱えている。
だが、脚本上も演技上もその実(じつ)は浮かび上がってこない。

ところで、村尾との初めての対面シーンで、
ノースリーブ姿になって色気で迫るような演技は、実に不可解。
ただのサービスショット?

「ハゲタカ」の栗山もそうだったが
低い声を使いこなせない女優は、
弁護士・検事・キャスターなど、
職業的安定感を要求される役には不足である。

目立たんばかりに大芝居で一瞬刑事役で登場する六平。
同じく、刑事役の松重も相変わらず眉間のしわを見せる一発芸。
悪目立ちする彼らを使うなら、
無名の俳優を使ったほうがよほどマシ。

その他にも、佐藤浩市をはじめ
名のある俳優を出番の少ないチョイ役でしか使っていないのが残念。
村尾を取り巻く人たちの思い、
弁護士・検事の思い、冬香の関係者たちの思い。
周辺ドラマすべてが、全くあるいは中途半端にしか描かれない粗を
そうした配役が目立たせる一因ともなっている。

冬香の死にたいほどの恋情は
村尾とのやり取りではなかなか伝わってこなかったが
回想シーンをバックに
獄中で村尾が読む寺島の手紙のナレーションによって
ぐんと胸に迫ってくるものがあった。
これが本作で唯一評価できる点。

村尾が終盤、
決め台詞のように "選ばれた殺人者" という言葉を繰り返す。
だが、言葉ばかりが浮いていて
その裏にある主人公の気持ちがよく見えないまま幕。

TVでは、2夜連続で映画の倍の時間をかけてドラマ化。
村尾役に岸谷五朗、冬香役に高岡早紀を配したこの作品は
2007年の放映当時に観ている。

岸谷に小説家らしさは感じなかったものの
裁判を通じての心理表現は見事だったのを記憶している。
また、色気ある容姿と美しくしなやかな肢体を備えた高岡には
冬香のような役柄は打ってつけだった。

渡辺作品に登場する主人公の女性は
匂いたつような色気があり、それ相応の美形であることが不可欠。

端的に言えば
時間の制約を考慮しても、TVドラマの圧勝。

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