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『カーテンズ』 [舞台]

「カーテンズ」(2010)★★★☆☆55点
脚本: ルパート・ホルムズ
作詞: フレッド・エッブ
作曲: ジョン・カンダー
演出・振付: ビル・バーンズ
共同演出: 菅野こうめい
翻訳・訳詞: 高平哲郎
音楽監督: 清水恵介
装置: 島川とおる
照明: 原田保
衣裳: 村上由美
ヘアメイク: 藤重礼
音響: 実吉英一
舞台監督: 木村力
企画・製作: Quaras
出演:
 東山紀之(フランク・チョーフィ、警部補)
 大和悠河 (ニキ・ハリス、女優)
 マルシア (ジョージア・ヘンドリクス、作詞家)
 大澄賢也 (ボビー・ペッパー、男優)
 鈴木綜馬 (アーロン・フォックス、作曲家)
 岡千絵 (バンビ・バーネット、女優)
 芋洗坂係長 (シドニー・バーンスタイン、プロデューサー)
 鳳蘭(カルメン・バーンスタイン、プロデューサー・シドニーの妻)
 広瀬彰勇(ダリル・グラディ、ボストン・ムーン紙の批評家)
 青山明(クリストファー・べリング、演出家)
 大島宇三郎(オスカー・シャピロ、出資者)
 後藤晋良 (ジョニー・ハーモン、舞台監督)
オリジナル版の受賞:
 トニー賞受賞受賞
  ■最優秀主演男優賞 デビッド・ハイド・スピアーズ
 同賞ノミネート
  □最優秀ミュージカル作品賞
  □脚本賞
  □オリジナル楽曲賞
  □主演男優賞
  □主演女優賞
  □助演女優賞
  □演出賞
  □振付賞
会場: 東京 国際フォーラム・ホールC
観劇日: 2010年2月24日(水)
上演時間: 午後1:30~(休憩20分含・約2時間50分)
ジャンル: ミュージカル

Curtains.jpg

「カーテンズ」日本版の東京公演千秋楽を観劇。

新作ミュージカルの
トライアウト公演の舞台上で起きた殺人事件を巡る
ミステリータッチのミュージカルコメディ。

トニー賞で8部門にノミネートされたヒット作だが
「シカゴ」「キャバレー」のJ・カンダー&F・エッブの黄金コンビなのに
耳に残るナンバーは ♪死んじゃった♪ くらい。
欧米人と私の感性の違いか、当時良作が他になかったのか。
そこから推測するに、米国で大ヒットに導いたのは
主演スピアーズのコミックパフォーマンスの素晴らしさに違いない。
もしそうなら、東山は相当の重責を背負っていることになる。

その東山は、結局2枚目を脱することはできなかった。
ファン層を見越しての演出もあろうが
その登場からして、喜劇スターでなくやはり元アイドル。
本人が一生懸命2枚目にならないように抑えているのは分かるが
あの程度ではこの大役の役目は果たせるはずもない。
芝居が下手とは言わないが、笑える台詞も笑えない。
相手の息を取るタイミングの悪さと、
バカになりきれない表現の甘さによる。
オリジナルを観ていないので分からないが
フランクの "「ウエストサイド物語」をやった" というエピソードも
少年隊をネタにした内輪受けの台詞と推測する。
2幕後半からは、汗ボタボタ状態。
空調の具合にも拠るだろうが、演技に力が入りすぎている証拠。
まあ、"よく頑張ったで" 賞をあげよう。

流石はベテラン鳳欄。
俳優役以外は、ほとんどダンスの見せ場はないが
しなやかな体の動きと貫禄で見せる緩いダンスも圧巻。
彼女が作品の芯となる位置にいなかったら
と思うとちょっと恐ろしい。
ただ残念なのは、声をつぶしていたこと。
重症ではないが、高音がガサガサ。
休演日を挟んでの大阪・名古屋公演は
短期決戦なのでこのまま乗り切ることだろう。

マルシアは歌は上手いが
台詞は訛りが抜けないし、芝居もインパクトがない。

大澄はああいう役なら、
彼の地のキャラとギャップが少なく、役割は十分果たせている。
ダンスの切れは素晴らしい。

芋洗坂は、演技・歌ともひどい。
お笑いのキャラクターを活かす以前に
妻役の鳳に圧倒され、役者としての器の小ささが浮き彫り。
カーテンコール前に、東山と2人のダンスシーンがあるが
これはダンスの得意な2人のために特別に用意した
オリジナルにはない日本版のみの創作であることは明らか。
技術が高いわけではなく
太って踊れそうにない人が結構踊れるという
意外性が受けているだけの話。
TVで知名度も上がったから、客寄せパンダとしての起用。

バンビ役の岡千絵が最高。
ダンスが抜群に上手い。
腹筋が見事に割れた蟹腹状態。
センスだけでなく、鍛錬による賜物だということが伺える。
歌についてはソロはないので、印象は薄いが
何より華がある。
スター俳優にとっての絶対的条件だ。
彼女が主役を張る作品を早く観たいもの。
観に来てよかったを思わせる唯一の収穫で、
すっかりファンになった。

鈴木綜馬。
当りの優しい声や台詞回しは素敵だし
芥川英司として、四季で主役を歴任してきた
安定味と歌の上手さは光る。
だが、四季を出て10年以上を経ても
母音法に基づく四季節は抜けず、
演技に柔軟性がないのが惜しい。

その他にも、青山・広瀬・大島と元四季のオンパレード。

クリス役の青山は不可のない演技だが
悪目立ちするぐらい、もっともっとやっていい。
でないと、
フランクに演出の座を奪われて怒らないのが不思議に感じてしまう。

大島も元四季、と言っても30年くらい前の話。
ストレートプレイやコメディで場をこなしてきた安心感がある。
20年くらい前に彼が主演を務めた「フィレモン」というミュージカルを
池袋・ルピリエで観ているが
そのときは、歌の音程もブレまくりで
記憶に残ったのはスキンヘッドのインパクトだけだった。
この舞台では、音程もしっかりした心地よい低音を聴かせている。
"俳優は板の上で育つ" いいお手本。

舞台監督ジョニー役の後藤は、とても好感の持てる俳優。
ルックスが甘いだけの俳優に終わらない個性の一端を感じる。
もう少し大きな役どころで観たい俳優だ。

ヒロインの大和悠河。
はっきり言って×だ。
宝塚宙組で男役トップを張っていたらしいが
いかにも宝塚の娘役を思わせる発声。
一人だけ浮きまくっている。
宝塚でどうだったかは知らないが
まず普通に話す訓練から始めなければ
華も色気も可愛さも感じられない女役としての彼女に先はない。

客席の9割は女性。
しかも、その大半が年配の方で、東山目当ての人ばかり。
カーテンコールでは
ラストの東山の登場まで、手拍子が乱れることが一度もなかった。
お辞儀しに出てくる俳優たちを、そのたびに讃えるため
手拍子が喝采に変わる瞬間があってしかるべきなのに
それがなかったのは悲しい事実。
東山以外、
誰一人拍手喝采に値する活躍をしなかったと言うなら別だが。

コアなファン以外、その観る目は
演歌歌手やアイドルが演舞場でやるようなショーの域を出ず
まだまだミュージカルが本当の意味で
日本に根づいているとは言いがたい。

東山ファンの皆さんのために、カーテンコールの一幕。
再三のカーテンコール(さすが "カーテンズ")のあと
促され、観客を座らせてのスピーチ。
「2月28日に東京マラソンがあります。
なので、参加する人は大阪公演は観に来られません。
でも、気にしないで好きなように走ってください」
共演者も観客も少し唖然となるような的外れな挨拶に聞こえる。

我々のそば、一階席中央ブロック7列目で安田美沙子が観劇。
おそらく、あの発言は
東京マラソンに参加する安田に向けての洒落たメッセージ。

私が普段観るミュージカルは
現地のオリジナル版か、その来日プロダクションばかり。
日本人キャストのミュージカルを観たのは
劇団四季作品を除くと
20年ほど前の「アニー」やSKDの舞台まで遡る体験だった。

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