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『現代能楽集 鵺(ぬえ)』 [舞台]

「現代能楽集 鵺(ぬえ)」(2009)★★★☆☆60点

▽インタビュー「「現代能楽集 鵺」のみどころ」
ゲスト: 坂手洋二
     燐光群主宰、劇作家・演出家
     岸田國士戯曲賞、鶴屋南北戯曲賞など受賞多数
案内: 礒野佑子アナ

▽舞台「現代能楽集 鵺」
原作: 
作: 坂手洋二
演出・芸術監督: 鵜山仁
美術: 堀尾幸男
照明: 小川幾雄
音楽: 仙波清彦
音響: 秦大介
衣裳: 前田文子
舞台監督: 増田裕幸
制作: 新国立劇場
出演:
 [第一部:頼政と鵺]
  たかお鷹(頼政)
  坂東三津五郎(武者)
  田中裕子(女)
  村上淳(家臣)
 [第二部:川向こうの女]
  坂東三津五郎(旅人)
  田中裕子(女)
  村上淳(男)
  たかお鷹(見回りの者)
 [第三部:水の都]
  田中裕子(女・村上の妻)
  坂東三津五郎(女の彼・村上の部下)
  たかお鷹(中年男・村上)
  村上淳(地元青年・グエン)
収録: 2009年7月11日 東京 新国立劇場・小劇場
番組: NHK芸術劇場 劇場中継「現代能楽集 鵺」
チャンネル: NHK教育
放送日: 2010年2月12日(金)
放送時間: 午後10:30~翌日午前0:45(17分+118分)
ジャンル: 現代劇

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複式夢幻能という形式を用いた世阿彌作の能舞台「鵺」をモチーフに
時代を変え "鵺" のドラマを4人の役者で描く3話オムニバスの舞台。

坂東三津五郎。
流石は歌舞伎俳優というべき見事な発声。
そして、現代を舞台にした第二部・第三部では
歌舞伎流の大芝居でなく、コンパクトな演技に徹している。

たかお鷹はベテランらしく
きっちりポイントを押さえた演技。

地味な顔立ちながら
その演技力で若い頃から注目を浴びてきた田中裕子は
役どころそのままに、変幻自在な顔を見せている。
無邪気な笑顔と、怒りに満ちた気丈な表情が印象的。
演技派女優の面目躍如。

村上の滑舌の悪さ・大根ぶりは
実力派3人を相手に、余計に目立つ。
何を言っているか分からない状態は
観客にフラストレーションを溜めるばかりで、失礼極まりない。
同業としては、観ていて哀れとまで思ってしまう。
演技にも見どころなく
何故、彼をキャスティングしたのか全く以って不可解。

第一部。
古典をベースにしているとはいえ
折角現代劇としてやるのだから
もう少し台詞を分かりやすく整理しても良かったのではと思う。

鵺への変身は歌舞伎の流儀を導入したものだが
黒子を使った早変わりは
思ったより手間がかかっておりまどろっこしい。
早変わりというには少し工夫が足りない。

"鵺を討つ者は鵺になる。永遠の地獄めぐりにようこそ!"
という女の台詞は恐ろしい警告である。
帝の命に従い、
虎鶫(とらつぐみ)の番いを鵺と勘違いしたまま討つ。
武者こそがその鵺であり、女はその鵺の妻であった。
見損なった虎鶫たる鵺は、猜疑心が生んだ幻であり
その幻を目にする理由は、
人の心の闇にすむ魔、権力を手にした者の不安なのである。

第二部。
第一部同様、川が生と死の境界を示している。
船が流れに翻弄され、男が翻弄される様を表現する意図らしいが
両袖からの黒紐で引っぱりまわされる様子はぶざまと言う他ない。
装置家、あるいは舞台監督
はたまた、それを良しとした演出家の無能と言わざるを得ない。

第三部は、ベトナムを思わせる国の話。
4人の体が結合するラスト以外、特筆すべきものはない。
4人の合体こそ
ありのままの人間の業であり、生者の象徴とも言える。
感動すら覚えるメタファー。

ただ、三部構成で描く意味があったかどうかは疑問。
その結末を用いた上で、
どれか一つのお話で作品を作り上げた方が良かった気がする。
完成度の低い第三部以外ならどちらでもいい。

鵺とは
得体の知れない存在であり、忌み嫌われる差別の対象。
その中にこそ、
権力欲・情欲・金銭欲など、人間の業を見出すことができ
生々流転、因果応報を思い知らされる。

さて
単細胞の私には、燐光群はじめ坂手作品は
面白いが観るには重い。
この作品も例外ではなかった。
出来に対する評価は分かれるところであろうが
観客を選ぶ作品であることは間違いない。

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