『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』

「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」（2008）★★★☆65点
監督：　樋口真嗣
製作：　富山省吾
プロデューサー：　山内章弘、甘木モリオ
エグゼクティブプロデューサー：　市川南、奥田誠治
脚色：　中島かずき
オリジナル脚本：　黒澤明、菊島隆三、小国英雄、橋本忍
撮影：　江原祥二
美術：　清水剛
編集：　上野聡一
音楽：　佐藤直紀
音楽プロデューサー：　北原京子
主題歌：　The THREE『裏切り御免』
VFXプロデューサー：　大屋哲男
殺陣：　久世浩
照明：　吉角荘介
装飾：　秋田谷宣博
録音：　中村淳
ナレーション：　大塚明夫
出演：
　松本潤（武蔵）
　長澤まさみ（雪姫）
　阿部寛（真壁六郎太）
　宮川大輔（新八）
　椎名桔平（鷹山刑部）
　國村隼（長倉和泉）
　高嶋政宏（本庄久之進）
　甲本雅裕（佐川出兵衛）
　上川隆也（宿場襲撃隊・隊長）
　古田新太（人買い）
　生瀬勝久（バクチ打ち）
　ピエール瀧（軍資金堀の侍）
　黒瀬真奈美（みつ）
　KREVA（刑部付きの侍）
　橋本じゅん
　粟根まこと
　徳井優
製作・ジャンル：　日本/時代劇・アクション/118分










インタビューで樋口監督いわく
この映画は、リメイク(remake)でなく、リボーン(reborn)。
オリジナル台本を使わなかったこと
メインの役どころが違うことなどを挙げていたが、
黒澤映画との比較を云々するのでなければ
どちらでもいい話だが、
リメイクに代わる言葉まで用意している時点で
意識しすぎている気がする。

最近作られる時代劇全般に対して思うのは
セット・画像が綺麗すぎるということ。
この映画は最たるもの。
色彩的にも鮮やかすぎれば、
衣類やセットに用いられる素材も良すぎる。
安い素材を使って作った方が
雰囲気もグッと上がるし、予算も抑えられそう
に思うのは素人考えだろうか。

綺麗なだけでなく、
椎名の傷のように作り物然としたメイクも同様。
すごく現代的な匂いがして
子供向けの戦隊物でも見ているような気分になってしまう。

勿論、
黒澤オリジナルを手本に作られた「スターウォーズ」も意識していて
鷹山刑部はダースベーダーだという。
言われてみて初めて、ああそうか、ぐらいにしか思わなかった。

鷹山・椎名と本庄・高島が退治するシーンはとても面白い。
特に、本庄の特異なキャラに高島の安っぽい演技がマッチしている。

一番の発見は宮川大輔の芝居がいいこと。
さんまが切り開いた若手芸人のドラマ・映画進出。
節操のない昨今の芸人起用に憤りさえ覚えるが
宮川の演技は買える。

松本潤。
「花より団子」のイメージをどれだけ壊せるか
が監督ともどもテーマだったらしいが
泥で顔を汚そうが、歯に汚しをかけようが
表面的な取り繕いに終始しても無駄。

隠し砦が2つ。
監督はタイトルにあるぐらいだから
もっと強調したかったらしいが
どちらも同じものに見えてつまらないし
リメイクでなくてリボーンだと豪語するなら
タイトルに引きずられて作品を変えるのでなく
タイトルの方を変えればいい話では？

「ローマの休日」を模したラスト。
長澤、松本ともに子供っぽすぎて
「ローマ～」のエッセンスを微塵も感じない。

"裏切り御免"
初めに長澤まさみに言わせた台詞を
最後に武蔵に言わせる台本作りは粋だと思う。
せっかくいいラスト。
台詞を吐いたあとに笑ってしまうから子供芝居になってしまう。
結局2枚目意識を捨てられない演技で幕。
イケメンが主役に使われるのは世の常だし
それ自体はまったく否定しないが
アイドルを脱皮できるかどうかは
俳優本人の人間的な成長如何だ。

阿部寛は頑張っている割には報われない作品。

コメント 2

こんにちは。
多角的な作品批評、どれも的確です。

とくに、時代劇における衣装の問題は、
私も常日頃懸念していたところです。
「化学繊維」を使っちゃだめですよねぇ。

セットにしても予算を抑えるどころか、
「予算をかけて汚く作る」という発想も必要な気がします。

山田洋次監督の藤澤周平3部作における
リアリティを感じさせる「武士の生活」は、
時代劇に新風を吹き込んだと思いましたが、
影響は限定的だったのが残念です。
by ジャニスカ (2009-12-23 12:23) 

ジャニスカさんの言うとおり
「予算をかけて汚く作る」ことは
確かに必要だと思います。

お金の使い方はとても難しいですね。
昔の素材を作るために余分な金がかかるなんて
皮肉なものです。
世の中は便利になったのかもしれないけど
決して裕福になった訳ではないのかもしれません。

by ケイイチロウ (2009-12-24 00:25)