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『波止場』 [洋画(ハ行)]

「波止場」(1954)(再)★★★★90点
原題: ON THE WATERFRONT
監督: エリア・カザン
製作: サム・スピーゲル
原作・脚本: バッド・シュールバーグ
撮影: ボリス・カウフマン
音楽: レナード・バーンスタイン
出演:
 マーロン・ブランド(テリー・マロイ)
 エヴァ・マリー・セイント(イディ・ドイル)
 リー・J・コッブ(ジョニー・フレンドリー)
 ロッド・スタイガー(チャーリー・マロイ、テリーの兄)
 カール・マルデン(バリー、神父)
 パット・ヘニング(ヂューガン)
 マーティン・バルサム(ドイル、イディの父)
 リーフ・エリクソン(グローヴァー)
 ルディ・ボンド(ムース)
 ジェームズ・ウェスターフィールド(ビッグ・マック)
受賞: 
 アカデミー賞
  ■作品賞
  ■主演男優賞: マーロン・ブランド
  ■助演女優賞: エヴァ・マリー・セイント
  ■監督賞: エリア・カザン
  ■脚本賞: バッド・シュールバーグ
  ■撮影賞(白黒): ボリス・カウフマン
  ■美術監督・装置賞(白黒): リチャード・デイ(美術)
  ■編集賞: ジーン・ミルフォード
 ヴェネチア国際映画祭
  ■サン・マルコ銀獅子賞: エリア・カザン
  ■イタリア批評家賞: エリア・カザン
 NY批評家協会賞
  ■作品賞
  ■男優賞: マーロン・ブランド
  ■監督賞: エリア・カザン
 ゴールデン・グローブ
  ■作品賞(ドラマ)
  ■男優賞(ドラマ): マーロン・ブランド
  ■監督賞: エリア・カザン
  ■撮影賞(白黒): ボリス・カウフマン
 英国アカデミー賞
  ■男優賞(国外): マーロン・ブランド
製作・ジャンル: 米国/ドラマ/108分

波止場 [DVD]








ニューヨークの港を舞台に
貨物の積下しを仕切るギャングと、それに立ち向う沖仲仕達の姿を
元ボクサーの若者を主人公に描いた映画。
演出は、アクターズ・スタジオの創始者の一人で、
メソッド演技法を確立したE・カザン。

最初にこの映画を観たのは、今から20年以上前である。
メソッドやマイズナーに興味を持ちはじめ
その筋に詳しい演出家から、観ることを勧められた作品だった。
すぐに観たものの、当時の私は "これのどこが面白いのか" と一蹴。
演出・演技の素晴らしさに気づけない未熟者だった。
「いずれ分かる時が来る」とその演出家に言われたまま
今日までこの作品を再び観ることはなかった。
いつ私が、本作の素晴らしさを理解する域に達したか分からないが
今、彼の言葉の意味をしっかと噛みしめている。

ストーリーは
敬愛する赤木圭一郎が出演した日活映画にもありがちだが、
リアリズムを追求したカザンと、娯楽を追求した日活とでは
かくも出来上がりが違ってくるものか。

鳩舎での
イディとテリーのやりとりは出色。
そのありきたりの台詞は
主義ゆえの抵抗と抗いがたき恋情を織り交ぜた命を吹き込まれ、
逡巡しつつも寄り添おうとする二人の心模様が
見事に表現されている。
これぞ、メソッド演技の真骨頂といったところだろうか。

本作が映画デビューとなるE・M・セイントが
アカデミー助演女優賞を手にしたのも頷ける。

デューガンが事故を装って殺され
神父が船倉でジョーたちを天の名の下に糾弾した後、
神父とジョーイの父、そしてデューガンの遺体を乗せたリフトが
船倉から甲板へと釣りあげられていくシーン。
それは、あたかもデューガンの魂が天に召されていくようである。

深夜、亡き兄の上着を手に、屋上の鳩舎にテリーを訪ねるイディ。
その時、テリーは "鳩が鷹に怯えている" ことを口にするが、
奇しくも、ジョニーに怯える自身の心理を表出する形になる。
この短いラブシーンにもグッと引き込まれる。

テリーの元にやってきた刑事が
「公聴会にはエレベーターが欲しい。階段は苦手でね」と告げる。
これは、
真実の解明にテリーの証言が大きな役割を果たすことを暗示し
テリーに証言を促しているわけだ。
こういったなぞらえにも、練られた脚本・緻密な演出を感じる。

脚本の上手さを感じるといえば、
兄チャーリーが、弟の行動をめぐって選択を迫られるシーンもしかり。
競馬予想について
「3着に来るのはニューホープか」と尋ねる仲間に向かって、
ジョニーの側近は "Definitely(間違いねえ)" と答える。
次に、チャーリーに選択を迫る自分が正しいことを確認する上で
ジョニーが "My right track?(俺は間違ったこと言ってるか)"
と側近に尋ねる。
ここでも、その側近は "Definitely(仰せのとおり)" と答えるのだ。

こうした掛詞・なぞらえは、英語に頻繁に登場するが
この作品でもそれが効果的に用いられている。

タクシーでの会話からイディ宅のシーンまでの大仰な効果音は
とっても邪魔に感じた。
リアリズムを追求するなら、まったく不要ではないだろうか。

証言をしたテリーに対し
イディの父親までが背を向けるのは解せない。
また、その態度にイディが憤りも意見もしないことも同様。
ジョニーの報復に怯えるのは分かるが、
罪悪感を感じている様子すらないのはどういうわけか。

当時のハリウッド映画に新風を吹き込んだメソッド。
特に、すでに記したテリーとイディのシーンをはじめ
タクシー内での兄弟の会話など、
ツーショットのシーンにその奏功を見てとれる。

メソッドが支持を集めるのに貢献した俳優といえば
J・ディーン、A・パチーノ、P・ニューマンらが挙げられるが
第一人者はやはり、マーロン・ブランドであろう。
アカデミー主演男優賞を受賞した本作での演技は見事。
バリー神父に扮するK・マルデンとのシーンにおける
ブランドの繊細な視線の動きは秀逸。

メソッド演技については、批判や懐疑論も多いが
少なくとも、この傑作の評価を下げるものではない。
 
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