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『肉体の悪魔』 [洋画(ナ行)]

「肉体の悪魔」(1947)★★★☆70点
原題: LE DIABLE AU CORPS
英語題: DEVIL IN THE FLESH
監督: クロード・オータン=ララ
原作: レイモン・ラディゲ
脚本: ピエール・ボスト
ジャン・オーランシュ
音楽: ルネ・クロエレック
出演:
 ミシュリーヌ・プレール(マルト・グランジェ)
 ジェラール・フィリップ(フランソワ・ジョベール)
 ドニーズ・グレイ(グランジェ夫人、マルトの母)
 ジャン・ドビュクール(フランソワの父)
 ジェルメーヌ・ルドワイヤン(フランソワの母)
 ジャン・ヴァラス[ララ](ジャック・ラコウム)
 ガブリエル・フォンタン
 シルヴィー
 ジャック・タチ
製作・ジャンル: フランス/ロマンス・ドラマ/116分

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夭折の作家ラディゲの処女長編の映画化。
主演も若くして亡くなった貴公子、G・フィリップ。
彼が、年上の女性と道ならぬ恋に落ちる10代の青年を演じ
その人気を決定づけた佳作。

ちなみに、故・岡田眞澄の愛称 "ファンファン" は
元々、フィリップの愛称であり
岡田が彼に似ていたところからきている。
フランスのジェームス・ディーンと呼ばれたように
陰のある美男子という点では共通するが
二人の違いは、気品の一点に尽きる。

第一次大戦下、病院として供用されていた学校で
フランソワとマルトは出会う。
既に、婚約していたマルトだったが
フランソワの若い情熱を前に、恋に落ちる。

別に、フランス人女性をよく知るわけでもなく
何の根拠もないのだが
マルトに扮するプレールは、アメリカ的な印象を受けた。
単に、世界的に流行していたであろう化粧のせいかもしれない。
彼女の美しさは、しっとりとしたとでも言うのだろうか
懐に抱かれるような安心感を覚える。
タレ目を強調するような、
目尻にアクセントを置いたマスカラの付け具合にも
ホッと親しみを感じる。

出征中の婚約者がいる女と、まだ学生の男。
どちらの家族も、初めは執拗に反対していたのに
既成事実ができると、いつの間にやら黙認
という展開がいかにも、自由恋愛の国フランスを感じさせる。

高校生フランソワは
当時25歳だったフィリップが演じたこともあり
かなり大人びた青年である。
その外見の一方で、彼のとる行動はひどく優柔不断で身勝手。
若さゆえの愚かさが始終見え隠れする。

粉をかけたのはフランソワ。
罪悪感を感じながらも、恋の炎に火がついて
母の反対を押してまで逢引きしようとするマルトの姿を目の前に
引き返してしまう彼。
待ち合わせ場所まで父親と一緒にやって来ること自体
フランソワの幼さを表わしている。

マルトが身ごもり
何もかも夫に打ち明けようという段になっても、
またしても父親の諌めの前に、一転、その鉾を収めてしまう。
腹立たしいほど、優柔不断だ。

だが、我が身を振り返れば、思い当たることが少なからず、
若さゆえの無分別・経験の浅さからくるものよ
と理解するのである。
ただ、理解はすれども、許せはしない。

それゆえ、そのフラフラした心の迷いが
ついには恋人を死なせる結果になる結末は
切なさといった簡単な言葉で片づけられない
モヤモヤした感情を胸に宿すのである。

いずれにせよ、
そうした若者像を繊細かつリアルに演じて見せた
フィリップの演技は
彼が見てくれだけの俳優でないことを如実に証明してくれている。

ところで
当時の汽車には、車内通路がなかったのだろうか。
雨の中、ずぶ濡れになった車掌が
車両側面のドアを開けて入ってくるのに驚いた。
新しい発見。
 
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