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『海を飛ぶ夢』 [洋画(ア行)]

「海を飛ぶ夢」(2004)★★★★☆☆80点
原題: MAR ADENTRO
英語題: THE SEA INSIDE
監督・脚本・製作総指揮・音楽・編集: アレハンドロ・アメナーバル
製作総指揮: フェルナンド・ボバイラ
脚本: マテオ・ヒル
撮影: ハビエル・アギーレサロベ
プロダクションデザイン: ベンハミン・フェルナンデス
衣装デザイン: ソニア・グランデ
出演:
 ハビエル・バルデム(ラモン・サンペドロ)
 ベレン・ルエダ(フリア、弁護士)
 クララ・セグラ(ジェネ、尊厳死支援団体員)
 ロラ・ドゥエニャス(ロサ)
 マベル・リベラ(マヌエラ、ホセの妻)
 セルソ・ブガーリョ(ホセ、ラモンの兄)
 タマル・ノバス(ハビエル、ホセの息子)
 ジョアン・ダルマウ(ホアキン、ラモンの父)
 フランセスク・ガリード(マルク、弁護士)
受賞:
 アカデミー賞
  ■外国語映画賞
 ヴェネチア国際映画祭
  ■男優賞 ハビエル・バルデム
  ■審査員特別賞 アレハンドロ・アメナーバル
 ゴールデン・グローブ賞
  ■外国語映画賞
 ヨーロッパ映画賞
  ■監督賞 アレハンドロ・アメナーバル
  ■男優賞 ハビエル・バルデム
 インディペンデント・スピリット賞
  ■外国映画賞 監督:アレハンドロ・アメナバール
 放送映画批評家協会賞
  ■外国語映画賞
製作・ジャンル: スペイン/ドラマ/125分

海を飛ぶ夢 [DVD]








実在したラモン・サンペドロの手記『地獄からの手紙』を基に
事故で四肢麻痺となった主人公が、尊厳死を求める姿を描く。

主演は、ペネロペ・クルスの夫にして
オスカーはじめ、数々の映画賞を手にしているハビエル・バルデム。

尊厳死を求めるラモンに協力することになる弁護士フリア。
彼女もまた、
脳血管性痴呆を患い、少しずつ体の自由を奪われていく。
体のハンデを負う者同士、気持ちを通わせ恋心を抱くのは
至極当然の流れに思う。

一度だけ描かれる2人のキスシーンは
エロティックなまでに美しく、時間が止まったかのよう。

法廷へと出かける道中、様々な景色が車窓を飛びすぎていく。
病床で、空を自由に飛びまわる夢を見つづけるラモンにとって
わずかながら、夢が現実に姿を変えた瞬間だ。

ラモンが書き溜めた詩の出版を手伝うフリア。
"本当に愛するからこそ、できるのだ" と
見本品を届ける日に自殺幇助を決行する、と約束する。
いくら本人が望むからと言って、愛する人を死に追いやることは
私にはどうしても想像つかなかった。
だが結局、見本は郵送され、彼女は姿を現わさなかった。
約束を反故にしたフリアの気持ちならば、理解するに難くない。

ラモンが自宅を離れ死の旅立ちを出かけるシーン。
今生の別れを前に
マヌエラ、ホセ、ハビが見せる三者三様の悲しみが胸に詰まる。
以前、捧げられた詩の意味も理解できなかったハビが
乞われてラモンをハグする場面には、
辛い思いに喉元を締めつけられる。

自殺に臨むラモンとの最後の会話の中で
ロサは彼にキスをするのだが、唇にではなく額にである。
フリアとのラブシーンとは、対照的であり
ここに、2人の女性の、ラモンとの関係の違いが
象徴的に表現されている。

ラモンの死後、ジェネは彼がフリアに残した手紙を届けに行くが
視力を失い痴呆の進んだフリアは、
ラモンが誰であるかも覚えていはいなかった。
ともに死ぬことさえ誓い合った間柄なのに
最後の最後まで救いようのない、残酷な話。

ただただ、切ないばかりの内容だが、
感覚があるはずないのに
"足が痒くて我慢できない" とジョークを飛ばすラモンの
優しさとユーモアが唯一の救いだろうか。
これだけを取り上げれば
彼も、生に対して前向きのようにも見える。

ラモンが死への道のりを歩んでいく一方で、
恋人を得、妊娠・出産するジェネ。
作品全体を通じて、対照的に描かれる運命の皮肉も
"生きること" の意味を考えさせるファクターになっている。

登場人物全員の立ち位置とキャラクターが明確。
俳優たちの演技も真実味があり、
見事なアンサンブルを織り成している。

この映画を通して
悔いのない生を生きようと思いを新たにはしたが、
尊厳死をどう扱うか、認めるべきか否かについては
どうにも判断がつかない。

生きることが、周りの人たちの負担や迷惑にしかならず
かといって、自分からは能動的に何をしてやることもできない。
自分がその立場になった時はじめて
苦悩を実感し、意見を持てるのだろう。
なのに、
それを法的・宗教的に判断し取り仕切るのは "健常者"、という
根本的な不合理を排除できない、非常に難しい問題である。

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