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『秋刀魚の味』 [邦画(サ行)]

「秋刀魚の味」(1962)★★★★☆80点
監督・脚本: 小津安二郎
製作: 山内静夫
脚本: 野田高梧
撮影: 厚田雄春
美術: 浜田辰雄
照明: 石渡健蔵
音楽: 斎藤高順
録音: 妹尾芳三郎
出演:
 笠智衆(平山周平)
 岩下志麻(平山路子、周平の娘)
 佐田啓二(平山幸一、路子の兄)
 三上真一郎(平山和夫、路子の弟)
 岡田茉莉子(平山秋子、幸一の妻)
 中村伸郎(河合秀三)
 三宅邦子(河合のぶ子、秀三の妻)
 北龍二(堀江晋)
 環三千世(堀江タマ子、晋の後妻)
 東野英治郎(佐久間清太郎、平山の恩師)
 杉村春子(佐久間伴子、清太郎の娘)
 吉田輝雄(三浦豊、幸一の会社の同僚)
 加東大介(坂本芳太郎、自動車修理店主)
 岸田今日子(バー "かおる" のマダム)
 高橋とよ("若松" の女将)
 菅原通済(菅井、 平山の同級生)
 織田政雄(渡辺、 平山の同級生)
 緒方安雄(緒方 、 平山の同級生)
 浅茅しのぶ(佐々木洋子)
 牧紀子(田口房子)
 須賀不二男(酔客A)
製作・配給・ジャンル: 松竹/松竹/ドラマ/113分

秋刀魚の味 [DVD]








ヒョウタンとあだ名されていた恩師を
40年ぶりのクラス会に招くも
師はいまやラーメン屋に落ちぶれている。
おまけに
父の世話をして行かず後家となった娘は
不器量で愛想の一つも言えない。
酔いつぶれた父の姿に涙を流す娘。
名優・杉村春子の持ち味が活きるシーンだ。

平山は、そのラーメン屋で海軍時代の部下と再会。
繰り出した先のバーで、敗戦を語り戦時を懐かしむ2人の姿も
そこはかとない侘しさを感じざるを得ない。

師であった者が教え子に、
かつての上官が元部下に、
敬語を使って応対する光景はこの上なく優しく清々しい。
古き日本人がみな心得ていた礼節と思いやりがあふれている。

笠が口にする "シャボン" という言葉。
語源は、ポルトガル語ともスペイン語とも言われるが
今はすっかり死語になってしまった。
その言葉の響きは懐かしく、また、とても美しい。

野球に囲碁。
庶民の日常に溶け込み、ごく普通に身の回りにあった娯楽も
サッカーに押されゲームに飲み込まれて
今や時代遅れの存在となりつつある。
(近頃、"囲碁ガール" なる種族が増殖しているらしいが)

平山の長男の嫁を演じる岡田茉莉子。
彼女の棒読みと言っていい台詞回しには参る。
訛りににも似た棒読みを、逆に
穏やかな人柄を後押しする、味とした笠智衆とは対照的である。

岩下志麻に岸田今日子。
現在、あるいは晩年ではキャラが濃いというイメージの強い女優も
本作の頃の若き日々には、さっぱりとした明るさが前面に出ている。

岸田がマダムを務めるバーが、TORYS BARというのも懐かしい。
勿論、TORYS世代ではないものの、名称だけは知っていて
ただそれだけで、善良なる昔に対する郷愁を覚える。

同監督作品の「晩春」と違い
主人公には、同級生や娘の兄弟といった仲間がいることが
却って、娘を嫁に出した父の寂しさを深くしている。

"一人ぼっちか" とつぶやいて軍歌を歌う平山。
台所に佇む平山のラストショット。
横を向いた寄りめのカットと
フレームの奥、廊下越しに一人水を飲む姿がたまらなく切ない。
秋刀魚の、喉元に染み入るような苦味が
切なくも優しい時間を紡ぎ出す。

 
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