SSブログ

『潜水服は蝶の夢を見る』 [洋画(サ行)]

「潜水服は蝶の夢を見る」(2007)★★★★☆85点
原題: LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON
    (英語題 THE DIVING BELL AND THE BUTTERFLY)
監督: ジュリアン・シュナーベル
製作: キャスリーン・ケネディ、ジョン・キリク
製作総指揮: ジム・レムリー、ピエール・グルンステイン
原作: ジャン=ドミニク・ボビー「潜水服は蝶の夢を見る」
脚本: ロナルド・ハーウッド
撮影: ヤヌス・カミンスキー
美術: ミシェル・エリック、ロラン・オット
衣装: オリヴィエ・ベリオ
編集: ジュリエット・ウェルフラン
音楽: ポール・カンテロン
出演:
 マチュー・アマルリック(ジャン=ドミニク・ボビー、"ELLE" の名編集長・愛称 "ジャン=ドー")
 エマニュエル・セニエ(セリーヌ・デスムーラン、ジャン=ドーの妻)
 アンヌ・コンシニ(クロード・マンディビル、執筆補助係)
 マリ=ジョゼ・クローズ(アンリエット・デュラン、言語療法士)
 オラツ・ロペス・ヘルメンディア(マリー・ロペス、理学療法士)
 パトリック・シェネ(ルパージュ、神経科医)
 ジェラール・ワトキンス(コシュトン、担当医)
 マックス・フォン・シドー(パピノ、ジャン=ドーの父)
 アガト・ドゥ・ラ・フォンテーヌ(イネス、、ジャン=ドーの愛人)
 ニエル・アレストリュプ(ピエール・ルッサン、友人)
 イザック・ド・バンコレ(ローラン、友人)
 ジャン=ピエール・カッセル(リュシアン神父/店主)
 マリナ・ハンズ(ジョゼフィーヌ、ジャン=ドーの元恋人)
 エマ・ドゥ・コーヌ(ウジェニー)
受賞:
 カンヌ国際映画祭
  ■監督賞 ジュリアン・シュナーベル
 LA批評家協会賞
  ■撮影賞 ヤヌス・カミンスキー
 ゴールデン・グローブ
  ■外国語映画賞
  ■監督賞 ジュリアン・シュナーベル
 英国アカデミー賞
  ■脚色賞 ロナルド・ハーウッド
 インディペンデント・スピリット賞
  ■監督賞 ジュリアン・シュナーベル
  ■撮影賞 ヤヌス・カミンスキー
 放送映画批評家協会賞
  ■外国語映画賞
 セザール賞
  ■主演男優賞 マチュー・アマルリック
  ■編集賞 ジュリエット・ウェルフラン
製作・ジャンル: 仏国=米国/ドラマ・伝記/112分

潜水服は蝶の夢を見る 特別版【初回限定生産】 [DVD]








脳梗塞で "閉じ込め症候群(Locked-in Syndrome)" になった
雑誌 "ELLE" の名編集長ジャン=ドミニク・ボビー。
ベストセラーとなった彼の自叙伝の映画化。

まず、閉じ込め症候群とは
脳底動脈血栓症などに伴う高次機能障害の一種。
眼球以外の運動機能が完全に麻痺した状態。
植物状態と違うのは、知覚や意識が正常である点。
だからこそ、主人公は自分の体を "潜水服" と称するわけだ。
もし植物状態と診断を間違われたら、
それこそ、地獄の中の地獄となりかねない。

ただ、眼開閉によってのみ意思疎通が可能で
多くの場合、予後不良で早期に死亡することが多い。

映画では、左目が捉える像を
ぼかしたり歪ませたりして巧みな視覚効果を利用している。
眼球の動きに合わせていると思われるカメラワークも見事。
観る者を主人公の視線に惹きこんでいく。

ジャン=ドーを演じたM・アマルリック。
唇を曲げてはいるが、表情筋も動かないわけだから
回想シーン以外は
実質片目だけで、あの役を作り上げたのだ。
それで、セザール賞の主演男優賞に輝くのだから
頭が下がるの一言である。

下世話だが、
彼を手助けする2人の女性療法士が美人なのは
一流ファッション誌のイケイケ編集長には幸いだったはず。

話したくもない時に
まばたきの会話を強要されることは苦痛以外の何物でもない。
求めることは愚か、
やめさせたくても逃げ出したくても
何一つ自分の自由にはならない。

ジャン=ドーが "死にたい" と告げた時
取り乱すアンリエットの優しさと苦悩はひしひしと伝わってくる。

体も動き、五感も正常な私たちだが
知らぬ間に、
自分自身に分厚い潜水服を着せてしまっているのかもしれない。
その潜水服を脱ぎ捨てられるうちに脱いでおこう。

ジャン=ドーに残された術は片目のまばたきだけ。
それでも、本を一冊書き上げられたのは
過去の記憶と想像力にだけは、蝶の羽は生えていたからだ。
実務的には
伝える彼にとっても、書き取るクロードにとっても
恐ろしく気の遠くなる作業だったにちがいないが。

周りを顧みることのなかった人生。
家族の大切さに気づいたことが
彼にとっての救いであり、
彼が生きる意味とは、家族の存在に尽きると言ってもよかったろう。

ラストテロップ。
"ジャン=ドミニクは1997年3月9日死去
「潜水服は蝶の夢を見る」の出版後10日目だった"

氷山の氷が崩れ行くフィルムは、瓦解する自己を表すものであり
ラストに同じフィルム逆回転で再生されるのは、
瓦解した俗念の昇華を意味しているにちがいない。

nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 3

コメント 2

doramdorami

気になっていながら、まだ観ていない映画の一つでした。原作も、読み応えがありそうですね(^^)
by doramdorami (2010-03-19 01:04) 

ケイイチロウ

一見の価値ありです。
結構考えさせられました。

見たり読んだりしたら感想聞かせてください!
by ケイイチロウ (2010-03-19 21:06) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。