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『月給泥棒』 [邦画(カ行)]

「月給泥棒」(1962)★★★★☆80点
監督: 岡本喜八
製作: 金子正且
原作: 庄野潤三
脚本: 松木ひろし
撮影: 逢沢譲
美術: 竹内和雄
音楽: 佐藤勝
録音: 渡会伸
整音: 下永尚
照明: 金子光男
スチール: 竹林進
出演:
 宝田明(吉本文隆、クラウンカメラ社営業課社員)
 司葉子(佐山和子、クラブ "シルバ" ホステス)
 ジェリー伊藤(ホセ・ダゴン、ザバール商事・外国貿易課長)
 十朱久雄(太田黒、クラウンカメラ社専務)
 中丸忠雄(富永、同営業部長)
 宮口精二(立岡、同営業課長)
 浜村純(小柳、同人事部長)
 二瓶正典(手塚、同営業課社員)
 砂塚秀夫(石川、同営業課社員)
 横山道代(キリハタ洋子、人事部秘書)
 若林映子(友子、専務秘書)
 原知佐子(礼子、クラウンカメラ社電話交換手)
 森今日子(みどり、オリバー光学㈱電話交換手)
 富田仲次郎(カンダイチノスケ、オリバー光学㈱社長)
 柳川慶子(ミチル、クラブ "シルバ" ホステス)
 本間文子(掃除婦のおばさん)
 堺左千夫(野村、吉本の友人)
 塩沢とき(旅館の女中)
 沢村いき雄(屋台の主人)
製作・ジャンル: 東宝/コメディ/93分

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あるカメラ会社社員の出世物語を
恋愛を絡めて喜劇的に描いた喜八作品。

"諸君も会社から給料を受け取っているから今
その知遇に応え、期待に報いる義務と責任がある。
この努力の足りない者は
敢えて、「月給泥棒」 を汚名に甘んじなければならない。
重ねて言う、「月給泥棒」!"
この冒頭の訓示が利いている。

司葉子は、色気のない役柄が幸いして
ヒロイン役を全うしている。

その和子が乗るサンルーフの付いたモスグリーンのビートル。
機能的でないからか
今ではすっかり見かけなくなったが
フォルクスワーゲン=ビートルという時代が懐かしい。

"自分自身が幸せならいいんじゃない?" という和子に対し
"バカ言え。幸せってやつはね、
自分が人より上にいると分かったときしか、こりゃ感じないもんだぜ"
という吉本の言葉は、
高度成長期の当時だけでなく、景気低迷期の今にも通じる
その出世主義・拝金主義の空しさを投げかけてくる。

ダゴンに扮するジェリーも
朗らかな外人役を嫌味なく好演している。

ダゴン曰く
"和子に注いでもらったおかげで、ジュースで酔いました"
ベタなこの台詞に結構はまって笑ってしまった。

サボテンとトカゲの肝から作った媚薬は
「アラジン」を思わせるようなランプに入っているのも可笑しい。

吉本とミチルの目くばせに
モールス信号音をかぶせるのは喜八監督ならではの遊び。

媚薬が効いて、ダゴンの戦闘モードに入るのを
歌舞伎の拍子木で盛り上げる演出も気に入った。

惚れ薬の効き目を目の当たりにして
和子のことが心配になるなど
吉本が恋に純情なところが可愛い。

出世と金がポイントとなるこの映画で
かめつい掃除のおばさんも
ウィットの利いてくる笑えるキャラ。

"あなたは契約さえ取れれば
好きな女を他人に売り飛ばしても平気なのね"
和子のこの言葉に、前述の吉本の信条は完全に瓦解。

出世の道も閉ざされ、うらぶれた屋台の飲み屋へ。
実直誠実だけが取り得のような
冴えない課長の宮口精二が脇で抜群の存在感を示す。

恋人も職も失ったかと思いきや
しっかりライバル会社の営業部長に納まる痛快ぶり。
古巣に電話をかける、その薄紫の綺麗な電話機もイカしてる。

うまい具合に元さやに納まる吉本と和子。
媚薬入りのコーヒーを口にする瞬間に
オーケストラの大音量と共に、ガレージの光がスパークして終幕。
喜劇にして粋な幕引き。

全編通じて、可笑しいだけでなく
粋な演出アイデア満載の喜八コメディを堪能した。

デビュー当時の棒読みから成長した宝田明が
このスマートな喜劇の主人公にぴったりハマった。

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