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『十二夜』 [洋画(サ行)]

「十二夜」(1996)★★★☆☆60点
原題: TWELFTH NIGHT
監督・脚本: トレヴァー・ナン
製作: スティーヴン・エヴァンス、デヴィッド・パーフィット
原作: ウィリアム・シェイクスピア
撮影: クライヴ・ティックナー
音楽: ショーン・デイヴィ
出演:
 ヘレナ・ボナム=カーター(オリヴィア)
 イモジェン・スタッブス(ヴァイオラ)
 スティーヴン・マッキントッシュ(セバスチャン)
 ニコラス・ファレル(アントーニオ)
 トビー・スティーヴンス(オーシーノー公)
 ナイジェル・ホーソーン(マルヴォーリオ)
 ベン・キングズレー(フェステ)
 メル・スミス(トービー・ベルチ)
 イメルダ・スタウントン(マライア)
 リチャード・E・グラント(アンドルー・エーギチーク)
 ピーター・ガン(フェイビアン)
製作・ジャンル: 英国/古典・コメディ・ロマンス/134分

十二夜 [DVD]








シェイクスピア喜劇の定番をトレヴァー・ナンが脚本・監督。
不肖私も舞台でアントーニオを演じたことがある作品。

オリヴィアとセバスチャンはたとえ似ていなくても
観客は冒頭から双子だという設定を知っているから
お芝居の嘘ということで、特に舞台ではお約束で許される。
とはいえ、映画では似させるのにこだわるのは当然。
よく似たタイプを見つけてきた。

演技的には兄より妹の役柄に大きく依存する作品だけに
セバスチャンの演技力はさほど問題とならない。

重要な役どころといえば
物語の芯となるオリヴィアとヴァイオラ、
お笑い組のマルヴォーリオ、トービー、マライア、エーギチーク、
そして、その間を縦横無尽に行き来するフェステ。

ティム・バートンの内縁の妻、H・ボナム=カーターのオリヴィア嬢。
個人的な趣味と言われればそれまでだが
もう少し一般的に言う美形を持ってきてほしかった。

トービー、マライアは芸達者な2人を揃えて合格点。
しかし、マルヴォーリオがつまらない。
もう少し若手を起用してもよかったのではないだろうか。
フットワークが悪すぎて全く笑えない。
直接笑いを誘う役ではないが、滑稽に見えることが絶対条件。
ただただスノッブには見えるが、それだけ。

エーギチークに関しては同情する。
原作を読み込んでもなかなか捉えどころのないキャラクターなのだ。
愚直・臆病かつ、ある種精神分裂的性格。
どこに役の要があるか難しいのだ。
私は舞台でも映像でもこの役を見事に演じた俳優を知らないし
エーギチークを面白いと思わせる役者こそ名優だと信じる。

さて、何よりのミスキャストはフェステのB・キングズレー。
キャスティングの理由も意図もまったく分からない。
道化というと、
帽子とかスキンヘッドというイメージで演出されることがままあるが
道化はイメージキャストで成立するような単純な役ではない。
生真面目で重々しい役を演じることが多いキングズレー。
巧みに言葉を操る知性も必要だが
同時に、軽さや憂いが演技のキーとなる道化にはどう見ても不適。
オスカー俳優であり、ナイトの称号まで受けた彼だが
私は大根役者の部類だと思っている。
下手とは言わないが、何をやっても一本調子。
シェイクスピア劇には、
道化やそれに代わるポジション(パックなど)が多く登場するが
どれも作品を全体像を規定する上で大切で難しい役であり
重鎮や性格俳優と言われる人によって演じられることが多い。

あと、自分が演じたことがあるからだが
セバスチャンがアントーニオに対して随分薄情に感じる。
複数のカップル成立で盛り上がっている最中
何の別れの言葉もなくアントーニオが去っていく演出…???
邸内の連中と対照させるために
去るマルヴォーリオやトービーらと同じくくりにする意図は分かるが。

結局残ったのは、
I・スタッブスの好演と
双子、よく似てたなあという印象だけか。

80年代ミュージカル界を席巻した
ロンドンミュージカルの大半を演出したトレヴァー・ナン。
いまだに現役としてその高評価を受けつづけている。
2003年ブロードウェイで観た舞台
"Vincent in Brixton" も彼の演出だった。
ナンの演出というより、
クレア・ヒギンスの演技の素晴らしさによるものかもしれないが
ただのキスがあれほど美しく号泣を誘うものだと知った作品。
ナンの才能は私も疑わないが
実は喜劇が苦手、
あるいは、彼も人の子、時には駄作も作ってしまうということだ。

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