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『神田川』 [邦画(カ行)]

「神田川」(1974)★★★☆70点
監督: 出目昌伸
企画・製作: 藤岡豊、川野泰彦
企画: 山本又一朗
原作: 喜多條忠
脚本: 中西隆三
撮影: 原一民
美術: 竹中和雄
照明: 佐藤幸次郎
録音: 瀬川徹夫
編集: 渡辺士郎
音楽: 佐藤允彦
主題歌: 「神田川」(作詞・喜多條忠、作曲・南こうせつ、編曲・木田高介、唄・南こうせつとかぐや姫)
出演:
 草刈正雄(上条真)
 関根惠子(池間みち子)
 所雅樹(ビゼン)
 黒沢のり子(マキシ)
 佐久間亮(ゲバQ)
 花房徹(ネモ)
 北見敏之(サトリ)
 伊藤比南子(オハツ)
 芳賀まり子(ケメコ)
 勝部演之(上条哲、真の兄)
 賀原夏子(みち子の母)
 花澤徳衛(老書房主)
 神山繁(産婦人科医)
 名古屋章(古本屋の親爺)
 鳳八千代(料亭女将)
 藤田漸(学生)
 島もとき(学生)
 大隅さとみ(学生)
製作・配給・ジャンル: 東宝=国際放映/東宝/青春・ドラマ/84分

神田川 [DVD]








フォークトリオ・かぐや姫の名曲「神田川」をモチーフに
草刈正雄・関根恵子(現高橋惠子)主演で映画化。
早稲田界隈の神田川のほとりに住む早大生と
小さな出版社に勤める娘の悲恋を描いている。

草刈演じる真は、人形劇サークルの脚本を担当しているが
彼が作品中で書き上げる劇が「かぐや姫」。
タイトル曲で大ヒットを記録した
南こうせつ率いるフォークグループ名に引っ掛け
話題作りの一つにしている。

舞台の主舞台となる面影橋は
学習院大と早大のほぼ中間点に位置する。
荒川線の鬼子母神前駅は、面影橋から2つしか離れていない。
この映画を見て、主人公たちの初デートのように
神田川を上流へ遡ってみたいと思う人も多いだろう。

中絶の瞬間に
竹林に血を思わせる赤い飛沫のフィルターがかかる。
安っぽい演出にがっかりくる。
時代的に、あれが衝撃性を演出できたのだろうか?
無音とともにストップモーションにする程度で
十分のように感じた。

そもそも、かぐや姫に引っ掛け
心理の象徴描写として "竹林" のショットが多用されているが
効果的に働いているとは思えない。
他方、ラストカットまで登場する、かぐや姫と若者の操り人形は
印象的なアイテムとして記憶に残る。

マキシは
今の言葉で端的に表すなら、ストーカーだ。
家庭が裕福で知的である分、性質(たち)が悪い。
愛する人の恋人の存在を知った絶望からとはいえ
他の男にすぐ身を任せるというのも、短絡的で安易すぎる。
恋敵に対する妨害工作とはいえ
愛する人の不幸や、堕胎の強要を招くような行為を働き
挙句、その親友の命まで奪う。
一つの命を葬っておいてなお、傷ついたのは自分だと言い張る。
自分の恋敵と恋人の親友の死を一生抱えて愛を貫くことは至難だ。
死してまで、残された者たちにそんな重荷を背負わせる
マキシの身勝手さには腹の立つ思いである。

そのマキシにいいようにほだされ
死までともにするビゼンの心理は全く理解できない。
少ない言葉数の中に、真との強い友情を感じることはできるが
果たして、マキシに対する哀れみだけで心中できるだろうか?

今は橋の架け替えや、水質の浄化が進む神田川。
当時の姿をとどめる橋は少ない。
学生たちの長髪、真のベルボトムのジーンズなど
時代を感じさせるファッションも郷愁を誘う。

19歳の関根は、等身大の女性を演じているが
精神年齢の低下や若者の幼稚化が叫ばれる現在から見ると
格段に大人であり、かつ気品がある。
これは、15で銀幕デビューした彼女が
大人になり熟年期に入るにつれ、さらに磨きがかかる性質である。
そのデビュー作以来、関根の出演作には常に
興行成績を上げたい映画会社の意向で
ヌードの披露が組み込まれてきた。

そのスキャンダラスなプライベートも手伝って
過激な肌の露出は、
関根の知名度を上げるのに大きな要因となったのも事実だが
功ばかりではないと思う。

本作について考える。
真に押し倒されて覗く乳房は、
みち子の清純さを引き立てる助けになっており
シーンの展開としてもごく自然な流れの中にある。
ただし、わざわざ乳房を追いかけるカメラワークは気に入らない。
その一方で
真の公演巡業先の雪山までやってきた時のみち子。
かまくらを背景に、
"さあ、お楽しみのヌードシーンですよ"
と言わんばかりに用意されるカットは不要であり
ストーリーの主軸の邪魔とさえ思える。
みち子の雪山への登場は、「雪女」の童話も思い起こさせる。

まだ台詞の棒読みが残る関根だが
その純真な表情は、年齢や経験で培われるものではなく
むしろ失われていくもの。
顔のアップを見ているだけで
みち子に感情移入してしまう魅力が彼女にはある。

草刈については
"やっぱりカッコいいなあ"、
"あの独特の笑い方は若い頃からなんだ"
という程度で、演技的には可もなく不可もなく。

みち子の母親役・賀原が
水商売の崩れた中年女を良き塩梅で演じきっている。

真が兄を殴るシーンを見て、爽快に感じてしまうのは
反骨精神たっぷりの職業柄だろうか。

"私死ぬんなら、あんな雪山で死にたいなあ"
という唐突なマキシの台詞や
"かぐや姫の恋は悲恋に終わる" とみち子に何度も口にさせる点など
物語の直接的な前振り(ある意味、ネタばらし)が
脚本の稚拙さを露呈している。

しかし、打算なく純粋に愛に生きられるのは若者の特権である。
今の私に同じことができるだろうか。
そう自問すると、懐古的にも厭世的にもなる。

私はやはりハッピーエンドが好きだ。
真とみち子は、別れた後どういう人生を歩んだのだろう。
尽きることなく妄想してしまう。

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nekononeonkan

感想をじっくり読んでしまいました。
ストーカー・マキシなど、興味深いキャラクターですね(実生活には迷惑なだけの存在ですが)
若き麗しい関根恵子も観てみたいと思いました。
by nekononeonkan (2010-09-27 22:42) 

ケイイチロウ

ちょっとセンチな映画ですが
そのセンチさが適度で心地よかったです。

高橋惠子さんは私の好きな女優さんの一人。
関根時代の映画もなかなかいいですよ。

by ケイイチロウ (2010-09-28 02:55) 

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