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『わが魂は輝く水なり ― 源平北越流誌 ―』 [舞台]

「わが魂は輝く水なり ― 源平北越流誌 ―」(2008)★★★★☆80点

▽インタビュー「演劇はいま」
ゲスト: 秋山菜津子
      1966年生。
      紀伊國屋演劇賞(2001)
      杉村春子賞(2002)
      読売演劇大賞(2007)受賞
案内: 山口宏子

▽舞台「わが魂は輝く水なり」
作: 清水邦夫
演出: 蜷川幸雄
製作: Bunkamura
美術: 中越司
照明: 大島祐夫
衣裳: 小峰リリー
音響: 友部秋一
出演:
 野村萬斎(斎藤実盛)
 尾上菊之助(斎藤五郎の亡霊、実盛の息子)
 秋山菜津子(巴御前/義仲の影武者)
 津嘉山正種(藤原権頭)
 大石継太(中原兼平)
 長谷川博巳(平維盛)
 坂東亀三郎(斎藤六郎、実盛の息子)
 廣田高志(中原兼光)
 邑野みあ(ふぶき)
 神保共子(浜風、乳母)
 二反田雅澄(城貞康)
 大富士(黒玄坊、郎党)
 川岡大次郎(時丸、家人)
収録: 2008年5月 東京 シアターコクーン
番組: NHKミッドナイトステージ館 舞台「わが魂は輝く水なり」
チャンネル: BS2
放送日: 2010年2月6日(土)
放送時間: 午前0:45~3:40(30分+145分)
ジャンル: 新劇・時代劇

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巴御前と言えば、以前出演した舞台を思い出す。
女だてらに向こう気の強い妻を持つ役を演じたのだが
劇中、その妻が "巴御前" と呼ばれるのである。

斎藤実盛を主人公に、源平の戦いの後の荒廃を描いた舞台。

主役の俳優たちが上手い。

時に美しく、時に醜く、
可憐な顔、その一方で怒りや狂気に満ちた恐ろしい顔。
これほど魅力的な女優は少ない。
秋山の滑舌のよさ・はっきりした口角。
敢えて難点を言えば、ちょっと語尾が歌いがち。
本人はウェットが嫌いだと言うが、その語り口は結構叙情的。

菊之助は
普段培った女形の所作が、亡霊らしさに生きている。

萬斎の老けには参った。
それこそ、父・萬作が演じて不思議でない役どころだ。
萬斎は秋山と同い年で、この当時42歳。
五郎の死の真相を聞いた瞬間のリアクションの型芝居は嫌いだが
蜷川の演出なら御免なさい、だ。
別な見方をすれば、
独特の台詞回しも含めて型芝居だからこそ
この歳で老けがやれるとも言える。

津嘉山さん、やっぱり病に倒れられて以来
少し滑舌が甘くなってるな。
渋くカッコイイ俳優さん、徹マンは控えて末永く活躍を。

川岡大次郎にはびっくり。
最初はクレジットを見誤ったかと思ったくらいだ。
早々に殺されてしまう、見せ場のない
こんな小さい役で出演しているとは。
一時はイケメンの若手俳優ともてはやされたのに、
テレビに使い捨てられたか。

とにかく
やはり一線で頑張っている人たちは素晴らしい。
少しでも早くその仲間に入らねばと覚悟を新たにした。


ところで、改めて思う。
蜷川という人は、企画者・プロデューサーとして素晴らしいのだ。
作品選び、キャスティング、舞台装置の選定など
技術的に舞台を整えるのに長けている。
実盛が五郎の死の真相を聞いた後、五郎を呼び出すときの
闇から篝火だけがぽっと点くアイデアなど素敵だ。

ただ演出家としての才はいかほどか。
どうしても、主役級の上手さで持っているように見える。
自らの演出をスペクタクルと語っているらしいが
彼にはスペクタクルを生み出すことはできても、
ドラマを作ることはできないのだ。
素晴らしい本と素晴らしい役者におんぶに抱っこ。

六郎やふぶきをもっと素敵に見せられるはずだ。
彼らの実力不足、と逃げられては何も言えないが
世間的に名前の知れていない彼らにドラマを作らせることこそ
演出家のドラマ作りの腕を見せどころなのではないだろうか。

六郎は目立たぬがおいしい役だ。
坂東亀三郎は歌舞伎の世界では名は通っていても
一般人には馴染みがない。
最低限はやっているが、もっと頑張ってほしい。
髪がかぶって表情が見えないのは、単純にNGだ。

蜷川舞台で定番のように出てくる叫び。
叫びというのはかなり難しいのだ。
効果的に叫ぶには、絶対的な滑舌が必要だ。
ふぶきなどは
何やら喚いているが、言っている内容が分からない所が多かった。

ここ数年、
蜷川は「原点回帰」を念頭に清水戯曲と向き合っているらしい。
学生運動前後の若者たちの熱が投影されていると言う。
正直のところ
学生運動などライブで感じていない私には、
当然のことながら、そういう観点からは何も伝わってこなかった。

ただ、動と静、詩的な台詞。
台本の妙だ。
清水邦夫の詩はホントに心地よい。
2時間半近くの長さも全く気にならなかった。

瑣末的なことを一つ。
"神官" のアクセント、あれはおかしくないか?

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